来年1月の新政権始動に向け、次期大統領のドナルド・トランプ氏が閣僚人事を着々と進めている。新閣僚たちの舵取りは米国、そして日本の経済の先行きを左右するだけに、個人投資家の銘柄選びにも大きく影響する。投資のプロは今回の人事の先をどう読むのか。
「トランプ・トレード」は日米の株式市場に追い風と見られていたものの、選挙戦圧勝直後の急騰からは一服感もあり、先行きの見極めが必要だ。マーケットバンク代表の岡山憲史氏はこう言う。
「各分野で過激な政策を打ち出すトランプ氏ですが、その実現性やより具体的な方向性は閣僚の人選によって大きく変わります。また、要職となる閣僚ポストに民間企業のトップなどを据えたため、そうした新閣僚個人に関連する銘柄に目を向けることも重要なポイントとなるでしょう」
新閣僚のなかでも目玉となるのが、新設される「政府効率化省」トップに就任予定のイーロン・マスク氏だ。米EV(電気自動車)大手のテスラや宇宙企業のスペースXなどを経営し、大統領選でもトランプ氏に巨額の資金援助をしたことで知られる。
「マスク氏の本業にとっても就任は追い風と見られ、その恩恵を受ける注目銘柄として、まずパナソニックホールディングスを挙げたい。テスラと提携して電池の供給をしており、今後は電池技術のさらなる発展と需要拡大が期待される」(岡山氏)
マスク氏とともに政府効率化省トップとなるビベック・ラマスワミ氏も、市場に大きな影響を与えるキーパーソンだという。米製薬ベンチャーのロイバント・サイエンシズなどを創業した起業家で、米国では高い知名度がある。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏はこう見る。
「ロイバント社はソフトバンクグループの投資ファンドから11億ドルもの資金調達をしています。そのつながりが市場で評価されてプラスに働く可能性は高い。武田薬品工業や住友商事はラマスワミ氏と過去にパートナーシップを結んだ経緯から要注目でしょう」
住友商事は宇宙ビジネスも手がけるため、イーロン・マスク氏関連としても期待が集まりそうだ。