まもなく迎える受験シーズン。受験を乗り越え合格の喜びにひたる人がいる一方で、志望校へわずかに手が届かず悔し涙を流す人もいるだろう。その“わずか”で人生はどれほど変わるのだろうか。新刊『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?』(筑摩書房)で、小学生(高学年)や中学生でもわかるような書き方で経済合理性について解き明かした作家・橘玲氏が、学歴が人生に与える影響について解説する(同書より一部抜粋して再構成)。
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資格をもつ医者がすべて名医というわけではありませんが、そもそも資格がないと医者の仕事ができません。一流大学の卒業生がすべて仕事ができるわけではありませんが、大学を出ていないと入社試験すら受けられない会社もあります。
もちろん、学歴がなくても、実績を積み上げることで大きな成功を手にしたひとはたくさんいます。それでも、みんなと同じスタートラインに立てないと、回り道をすることになることは覚えておきましょう。
だったら、人生は学歴で決まってしまうのでしょうか。そんなことはありません。小さな失敗では人生は変わらないからです。
入試にぎりぎり合格した生徒と1点差で落ちた生徒の収入を比較
このことは、次のような調査で確かめられました。
アメリカは日本よりもさらにきびしい学歴社会で、大卒と高卒の生涯の収入は2倍もちがいます(日本では、高卒の生涯収入は大卒の7割程度)。
アメリカでも日本でも、ランク(偏差値)の高い大学のほうが、平均すれば収入も高くなる傾向があります。でもこれだけでは、一流大学がよい教育をしているからなのか、もともと優秀な学生が集まっているだけなのかがわかりません。
どちらが正しいかを調べるには、学力が同じで、学校がちがう生徒を探してきて、その将来を比べてみればいいのです。
アメリカでは、一流の私立高校は試験の点数を公開しているので、合格点ぎりぎりで入学できた生徒と、1点差で合格できなかった生徒を比較することができます。試験での1点のちがいは、実力ではなく、運がよかったか、悪かったかでしょう。つまり、まったく同じ学力の生徒が、運によって一流の高校か、その下のランクの高校かに分かれたのです。
では、この生徒たちの将来はどうなったのでしょうか。結果は「なんのちがいもない」でした。
1点足りなくて合格できなかった生徒たちも、合格した生徒たちと同じように、一流大学に進学して有名企業に就職し、同じくらいの収入を得ていたのです。