受験のような「小さな失敗」が人生に与える影響度合い
アメリカでは、一流大学から入学の許可が出ても、自分が勉強したい教科がないとか、別の大学に憧れの教授がいるとか、たんに家から遠いなどの理由で、入学を断る生徒がかなりいます。
これを利用すると、「一流大学に入学した生徒」と、「一流大学に入学できるのに、別の大学を選んだ生徒」という、能力は同じで、別の道に進んだ若者の将来を比較できます。
するとやはり、この2つのグループになんのちがいもなかったのです。入学できる能力がありながら一流大学に進学しなかった生徒も、一流大学の卒業生と同じように有名企業に就職し、同じくらいの収入を得ていました。
なぜこのようなことになるかというと、アメリカでは(そして日本でも)、一般に思われているよりも、会社は社員の学歴を気にしていないからでしょう。
学歴だけは立派でも、ぜんぜん仕事ができない社員がいることは、誰でも知っています。
入社してしばらくたてば、「あいつは思ったより仕事ができる」とか、「エリートのくせにぜんぜん使えないな」という評判が、会社のなかでつくられていきます。学歴よりも、一緒に働いた上司や先輩、同僚からの評判のほうが、ずっと正確に人的資本を予測できます。
このようにして、受験のような人生における「小さな失敗」は、最終的にはなんの影響も与えなくなるのでしょう。
※橘玲・著『親子で学ぶ どうしたらお金持ちになれるの?』を元に一部抜粋して再構成
【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)/作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。2006年『永遠の旅行者』(幻冬舎)が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない─残酷すぎる真実』(新潮新書)で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン─世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ─「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論「解決できない問題」には理由がある』(集英社)等多数。