トランプ大統領の再登板で「米中対立」の激化や「台湾侵攻」が懸念されるなか、アメリカの同盟国である日本はどう立ち振る舞うべきなのか。中国の歴史や文化、社会に精通する社会学者の橋爪大三郎氏と、元朝日新聞北京特派員のジャーナリストでキヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏は、いまの中国を理解するには「中国共産党」を徹底研究することが不可欠だと口を揃える。いったいなぜなのか(共著『あぶない中国共産党』より一部抜粋、再構成)。【第1回。文中一部敬称略】
橋爪:中国を理解するには、中国共産党の徹底的な理解が不可欠です。中国共産党は「国家と人民を指導する」ことになっている。憲法にもそう書いてある。でも日本では政府も、ビジネス界も、その研究が絶望的に立ち遅れている。
峯村:おっしゃるとおりです。1949年の新中国建国以来、どの政権になってもすべての政策は、中国共産党の支配下にあります。たとえば中国の産業政策について知ろうとする時、日本の経済産業省や外務省は、それぞれのカウンターパートの中国政府の商務部や外交部と対話をします。
しかし、政府部門から政策の真意や意図を知ろうとしたところで、本質には迫れないのです。政府部門は政策執行機関に過ぎず、重要な政策は共産党中央がすべて決めているからです。
現在の習近平政権で言えば、実際の政策はすべて共産党中央に連なる組織が決定し、それを各政府機関に下ろしています。そうした実情を含め、いまの中国を知るうえで必須となるのが、中国共産党の本格的な研究や分析です。にもかかわらず、それを実際にやっている人が少ないのが現状です。いわゆる中国研究者でも、中国共産党のロジックを理解していないと感じるケースが散見されます。彼らの思考回路を理解せずして、中国とのつきあいも、交渉も、金儲けもできないと考えています。