体の衰え、老後の資金、家族や親族との関係まで、歳を重ねると数々の「人生の壁」が立ちはだかる。この壁をどうやって乗り越えればいいのか──。誰もが悩む問いに、「がん」を含む人生の苦楽を知り尽くす経済アナリスト・森永卓郎氏がアドバイスする。
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老後資金が不安で仕方ないという声をあちこちで聞きます。
政府が「貯蓄から投資へ」と声高に唱えて、資産形成を煽りに煽っている。そのうえ「老後資産は2000万円必要」といった試算を出されたら不安が増すのは当然です。
しかし、本当にそんなにお金が必要なのか。投資をするのが正しいことなのか。甚だ疑問です。
金融市場の本質はギャンブルです。安く買って高く売れば儲かりますが、そうでない人は損をする。損をしたら損失を取り返そうとさらに資金をつぎ込んで、最後は底を尽く。こうした「投資依存症」の人は、2024年1月に始まった新NISAをきっかけに確実に増えているように感じます。
いまは人類史上最大のバブル相場の真っ只中で、金融商品が異様に高騰している。近いうちに暴落するのは必然です。
そもそも日本は高齢世帯の預貯金が溢れている現実があります。内閣府が8月に発表した経済財政白書によれば、金融資産のピークは60~64歳で平均1838万円。その後徐々に減っていくものの、85歳を過ぎても平均で1500万円を超す金融資産を持っている。
これは老後資産として「過剰なお金」を貯め込んだ末、ほとんど使わずに死んでいくことを意味しています。そして遺されたお金が、法定相続人の間で骨肉の争いとなる「争族」の原因になるケースも多い。遺産が1億円といった大金ではなく、数百万~1000万円程度のほうが争族になりやすいといわれています。