企業概要
いすゞ自動車(7202)は、グローバルに事業を展開する大手商用車メーカー。商用車をはじめ、ピックアップトラック、またディーゼルエンジンの製造販売を行っています。販売地域は世界150か国に及び、グローバル販売台数は66万台を数えます。
商用車は、普通免許対応の小型トラックから大型トラックにトラクタ、また各種バスや商用バンまで幅広くラインナップされています。最近トラック業界ではドライバー不足が問題となっていますが、普通自動車免許対応トラックも発売するなど、ニーズに合わせた新製品開発も得意とします。将来的には自動車業界のテーマであるCASE対応製品による業績寄与も注目されるところです。
製品別売上構成比は、大型・中型商用車が24%、小型商用車22%、ピックアップトラックが29%、産業用エンジン3%、その他22%とバランスが効いた構成となっています(2024年3月期売上高3兆3866億円)。
また同社ではアフターサービスを提供しており、売上の16%を構成しました。車両の制御コンピュータからデータを読み取り、運行管理や動態管理をサポートしたり、車両コンディション情報から故障の予兆を検知・予測し、稼働維持をコネクテッドシステムで支援しています。トラックの稼働に付随するサービスであることから、安定収益源として業績を支える役割を果たしていると考えることが出来ます。
強み:良質な大型エンジンを強みに各種製品にて37か国でトップシェアを獲得
幅広い商用車ラインナップの中、主要車種になっているものには、小型トラックの「ELF」、中型トラック「FORWARD」、大型トラック「GIGA」、またピックアップトラック「D-MAX」などがあり、それぞれ高い市場ポジションを構築しています。例えば「ELF(エルフ)」は1959年に誕生した日本を代表する小型トラックで、国内約40%のトップシェアを獲得しており、海外への主力輸出商品でもあります。「D-MAX」は1トン積ピックアップトラックの新車販売で4年連続トップを獲得している海外生産車の代表製品となっています。
これらはほんの一例で、同社HPを見ると、実に37ヵ国でトップシェアを獲得しています。
強みとなっているのが、良質な大型エンジンです。同社は世界トップクラスのディーゼルエンジンメーカーとしても知られ、他社製車両や産業用エンジンとしてOEM供給も行っています。世界トップの自動車メーカー車両から建設機械、冷凍機、船舶、特殊車両まで幅広く用いられています。
高い品質は、国や地域毎に評価基準が変わります。例えば高い気温や複雑な地形に対応できるか、等。走行環境が違えば燃料、用途、求められる品質が変わりますが、いすゞの車両は-70℃を記録する南極や55℃を超える赤道直下の道、高度4000mを超える山岳地帯でも使われています。様々な環境に対応しており、これが世界的な競争力となっています。
なお、2024年3月期、海外売上高は全体の67%を構成しました。
また、一方では開発コストの効率化も実現しており、一からエンジンを開発するのではなく広く応用の利くエンジン開発をすることで一台当たりコストを下げることに成功しており、これが東南アジアなど新興国でトップシェアを獲得する勝因となっていると考えられます。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。