お正月の風物詩といえば、「お年玉」だが、昨今は子供一人が貰う金額総額も減少傾向にあるようだが、それでもやはり子供達にとっての楽しみには違いない。しかし、物価高に賃金アップが追いつかない状況で、渡す側の大人にとってはそれなりの負担でもある。こうした状況下で、お互いが楽しく納得できるようなやり方はないものか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、ここ数年の正月の体験を踏まえて、お年玉のひとつのカタチについて提言する。
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学研教育総合研究所の「小学生白書30年史(1989~2019)」にはお年玉に関する調査結果があります。1992~2006年までお年玉をもらう小学生(1~6年生)は98%以上でした。それが2016年は86.2%にまで減少しましたが、そこから再び上昇して2019年には94.4%に。金額面を見ると、最も多かった1994年の平均総額は2万4949円でしたが、最も少なかった2015年は1万7578円です。
なんだかんだ言って、年始の風物詩としてのお年玉は、かつてと比べて存在感がなくなってきているようにも感じられます。筆者の周りからも「コロナで親戚の集まりがなくなり、そのままの流れで2023~24年の年末年始も集まらず、お年玉を誰にもあげなかった」「甥と姪の数が多く、ボーナスの中からお年玉用の予算を確保するのが正直キツい」などといった声が聞こえてきます。
正月恒例の行事とはいえ、お年玉をあげるのはそれなりの出費になるというのが大人側の本音ですし、そうはいっても、かつては自分ももらっていたことを考えれば、あげないのもどうかと思う。現代の子供達も楽しみにしているはずです。両者が納得できるような、お年玉のカタチはないものでしょうか?
子供がカラオケを歌ったら大人から「おひねり」が
私はここ数年、友人である佐賀県唐津市の農家・山崎幸治さん(51)の家を年始に訪問しています。親戚が多数いるため、当然子供の数も多く賑やかな会合となります。
仮に一人あたり平均3000円あげた場合、それだけで4万円近くになってしまうほど。それでは参加する大人達にとっては負担が大きい。というわけで、山崎家の正月は「お年玉を用意しない」という決まりになっています。
その代わりに何をするかといえば、「おひねり」です。小規模のお笑いや音楽ライブでよくある、演者がステージ前に箱やら麦わら帽子を置いて、そのパフォーマンスを気に入った客がお金を入れていく、というアレです。そして演者は終了後、客席を周ってさらにおひねりをもらう。
これを新年会の親戚一同の前で、子供達もやるのです。山崎家にはカラオケの機械があり、午後になると自然とカラオケ大会が始まる。そこで子供達が歌った場合は、終了後に座敷に座る大人の前を通り、手に持った箱にお金を入れてもらうのです。カラオケだけでなく、「今年の抱負」などをスピーチした子供にもおひねりは渡す。
金額は自由で、満足度やその時の気分次第で金額を変える場合もあれば、一律500円、ということで500円玉を大量に用意する人もいます。もちろん「あげない」という選択肢もあれば、少し高めの金額を渡す場合もある。