街の魚屋さんが減り続け、魚といえばスーパーで切り身やパックに入ったものを購入するという生活習慣が根づきつつあるが、魚を置いて店員がお店と相対しながら販売をする「対面販売」も健在だ。
そうした販売スタイルの店舗展開で、16年連続で増収を達成、直近6年間で売上高が約100億円の伸びをみせているのが、関東・信越地域に店舗を展開する大手鮮魚チェーン「角上魚類(かくじょうぎょるい)」だ。なぜいま、「鮮魚の対面販売」が再注目されるのか。東京海洋大学非常勤講師で水産物の流通にも詳しい、おいしい魚の専門家・ながさき一生さんの著書『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
昔の魚屋が担っていた「お魚コンシェルジュ」の役割
街にスーパーが台頭してくる前の時代。全国の商店街には魚屋が建ち並び、その頃は魚が売れていました。
では、その頃と今では何が違うのでしょうか。また、実は人件費を掛けられれば魚屋の売上は伸びるのですが、それはなぜなのでしょうか。
まず、商店街の魚屋と角上魚類にはある共通点があります。それは、対面販売を行なっているという点です。
街の魚屋は、狭い間口の店先に魚を並べ、お客と話をしながら売る対面販売が基本となっていました。そして、やってきたお客に「今日は何がおすすめか」「どのように食べると美味しくいただけるか」などの話をしていたのです。今風の言葉で表現するなら、「お魚コンシェルジュ」の役割を果たしていたのが昔の魚屋でした。