日本国内に数えきれないほどある、魚料理を扱う飲食店。お金を払って食べるのだから “良店”を見極めたいものだが、なかなか難しいのが現実だ。絶対ハズしたくない場合に、見極め方はあるのか。過去に築地市場の卸売企業に勤務し、現在は東京海洋大学の非常勤講師も務めるおいしい魚の専門家・ながさき一生さんによると、見るべきポイントはズバリ「“アラ汁”の有無」だという。
なぜ、アラ汁を置く店が“良店”といえるのか。ながさきさんの著書『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋してお届けする。
魚は1匹まるごと仕入れられる
食材としての魚と肉の違いとは何でしょうか。肉質の違い、脂の質の違い、保存方法の違い……様々な違いがありますが、その1つは「魚は、一頭買いが基本である」という点です。
飲食店が肉を仕入れる際、通常は解体後、部位ごとに仕入れます。一方で魚はどうでしょうか。マグロやカジキなどの大型の魚を除いて、基本は1匹まるごと仕入れられてきます。このことが、魚特有の事情を生み出します。
魚を扱う飲食店では、魚を捌いた後のアラを使った「アラ汁」が出てくる場合があります。このアラ汁を置いているお店は、魚という素材の特性をよく分かっているなと思って良いでしょう。そして、値段の割に美味しい魚が食べられるお店であることも多いと思います。
では、なぜアラ汁があると良いのでしょうか。具体的な例でご説明しましょう。