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あぶない中国共産党

【政敵がことごとく失脚】中国・習近平主席の「反腐敗キャンペーン」の本質 毛沢東の「文化大革命」と同じく「実態は権力闘争」との指摘

橋爪:汚職の場合、紅衛兵の代わりに活躍するのは、党の紀律検査委員会などの秘密警察組織ですね。この委員会は、党中央にあり、省や市にも張り巡らされています。

 だいたい党幹部は、出所のはっきりしない副収入や重大な紀律違反など、探せば誰にでもあるものなんです。だから、中央紀律検査委員会の元締めである習近平がその気になれば、恣意的に誰でもつかまえて違反を問い、政治生命を絶つことができる。

 文化大革命はそこまで洗練されていなくて、素人の紅衛兵を動員し、秘密になっていた個人情報で揺さぶった。党のために必死ではたらいてきた良心的でまじめな党員まで、大勢打倒されてしまいました。こちらのほうが罪が重いと、私は思います。打倒された人びとに責任がないからです。

 汚職の摘発は、運の悪い人がつかまっているだけみたいですが、それでも本人に何がしかの責任がある。そこが、文革との違いです。

峯村:いまでも档案は存在しますが、文書ではなくデジタル化されているようです。橋爪先生のおっしゃるように、その使い方はほんとうに恣意的です。

 文化大革命においても、毛沢東もしくはその周辺が、政敵たちの档案に基づく情報を意図的にリークして、紅衛兵らに打倒させていました。まさに権力闘争そのものだったのです。

 その点でも習近平の権力闘争と重なってきます。2012年に党総書記に就任した直後から、反腐敗キャンペーンを展開し、「トラもハエも退治しろ」との大号令のもと、1期目の5年間で25万人もの党員・幹部を逮捕・処分しました。

 重慶市党委書記の薄熙来、軍制服組トップの徐才厚、政治局常務委員だった周永康までターゲットになり、失脚に追い込みました。そうした政敵をことごとく潰したという点で言えば、習近平の反腐敗闘争は文革と相似形であるとの解釈が成り立つと思います。

(シリーズ続く)

※『あぶない中国共産党』(小学館新書)より一部抜粋・再構成

【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。社会学者。大学院大学至善館特命教授。著書に『おどろきの中国』(共著、講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに共著、集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)、『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)など。

峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年、長野県生まれ。ジャーナリスト。キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。朝日新聞で北京特派員を6年間務め、「胡錦濤完全引退」をスクープ。著書に『十三億分の一の男』(小学館)、『台湾有事と日本の危機』(PHP新書)など。

橋爪大三郎氏と峯村健司氏の共著『あぶない中国共産党』

橋爪大三郎氏と峯村健司氏の共著『あぶない中国共産党』

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