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郵便局員が他人のはがきを勝手に読んだ場合、法的にどんな問題があるのか? 弁護士は“重大な背信行為”と指摘、「内容を他人に漏らすと信書の秘密の侵害」

勝手に読むなんて…(イラスト/大野文彰)

勝手に読むなんて…(イラスト/大野文彰)

 古くから手軽な通信手段として利用されてきた「はがき」。封をされているわけではないので、その内容は“読もうと思えば読めてしまう”のも事実。では、もしも郵便局員が配達前や配達中にはがきの内容を読んでいたとしたら、法的にどんな問題があるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 はがきを送るため郵便局の窓口を利用しました。帰る途中で切手を買い忘れたことに気づき窓口に戻ったら、私が書いたはがきのメッセージを郵便局員が勝手に読んでいました。

 よく利用する郵便局だったのでとてもショックです。これは違法行為にはならないのでしょうか。罪に問うことはできますか。(神奈川県・54才・アルバイト)

【回答】
 憲法21条は基本的人権として、言論、出版等の表現の自由とともに「通信の秘密は、これを侵してはならない」と定めて、通信の秘密を保護し、私生活の自由を保障しています。

 通信の秘密は、通信内容が第三者に把握ないし審査されないようにする重要な役割があり、検閲の禁止につながります。そして、郵便事業に適用される郵便法では第7条で「郵便物の検閲は、これをしてはならない」と定めています。

 局員がはがきの文面を読んだことがこの検閲であれば重大な法律違反ですが、検閲とは通常、思想統制や公安上の目的で文書などの表現の内容を強権的に調べることです。おそらくその局員は、そのような大それた考えではなく、単なる好奇心で読んだのではないかと思われます。

 もっとも、検閲とまで言えなくても、郵便法第8条では「取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない」と定められています。

 はがきも「信書」です。ただ「秘密」かというと、はがきの文面は隠されていませんから、どうしても目に入ります。局員が信書の秘密に違反すると「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されますから、外から見えるはがきを単に読んだだけでは信書の秘密を侵害したとはいえないでしょう。

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