「物流2024年問題」の中で、赤字続きの郵便をどう建て直すか──。公益性が高い郵便事業は、ユニバーサルサービス(全国均一で安定的に利用できるサービス)が法律で義務付けられている。その維持コストの拡大が、将来的に経営上の大きな重荷になってくることは容易に予想できるが、これを見直して郵便サービスが届かなくなる地域を生じさせれば、地方の衰退は避けられず、地域住民の猛反発も予想される。活路はあるのか?
人口減少問題の第一に車で、最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
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ユニバーサルサービス維持の困難さは、郵便ポストの厳しい現状が証明している。
郵便事業ではポストを全国にあまねく設置する義務も課されており、日本郵便によれば2022年度末時点の設置本数は17万5145本だ。ところが、4分の1の郵便ポストは1か月あたりの投函量が30通以下なのである。全体の3.9%にあたる6793本は「月に0~1通」の投函しかない。一方、取集作業は原則ほぼ毎日実施することとなっており、月に0~1通といったほぼ利用されていないポストも含めて配達担当者が回っているのである。
いつポストに投函されるのか分からないのに、「その日」に備えて配達要員は確保しておかなければならないということだ。人口減少が進めば進むほど郵便局の維持コストが収益に見合わなくなっていく。ここに郵便事業を赤字にする本質的な問題がある。いくら仕事だとはいえ、「空っぽのポスト」を確認して回るというのは、現場で働く人には切なさもあろう。
改めて問われる「郵政民営化」の是非
経営の合理化に逆行するようなことを、利益を上げなければならない民間企業に求めること自体に無理がある。日本の人口減少は止めようがなく、このままならば民間企業として行うユニバーサルサービスはどこかの段階で破綻する。2018年に「郵政事業のユニバーサルサービスを安定的に確保するため」として交付金・拠出金制度が創設されたが、こうした動きが出てくること自体が将来的な行き詰まりの可能性を認めているようなものだ。
それでも日本郵便にユニバーサルサービスを求め続けるならば、郵便事業以外で多大な利益を上げられるようにするしかない。それができないのであれば、行政サービスとして国家の運営に完全に戻すのか、法律の改正を含めて人口減少時代に即した形とすべくユニバーサルサービスの定義を見直すかを迫られることになるだろう。