言いかえると、法定速度を遵守し、周囲の通行状況から注意を怠らず、適切な走行をしていた状態で、その走行速度との兼ね合いにより、飛び出しが予見可能になった時点で発見し、ブレーキを掛けたり、ハンドルを切っても、よけきれない場合には事故発生回避の可能性がないことに繋がり、結果的に過失は否定されます。結局、それは歩行者側の自殺行為と評価できるような場合にほかなりません。
ところが、ご質問のように、観光スポット化している車道上を歩行者がウロウロし、いつ飛び出してくるのかわからない状態なら、その動向に特段の注意を払い、予期せぬ飛び出しがあっても、すぐ停止できる速度で運転する、即ち、ノロノロ運転するしかないのです。そこで停止しているか、それに近い状態である車に、飛び出した歩行者がぶつかったなどの場合を除き、免責は無理でしょう。
ただし、歩行者側にも大きな責任があるので、相応の過失相殺が成立し、賠償額は減額されます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年1月31日号