SNS時代、若者の間で爆売れしているアナログな“日記帳”がある。文庫本とまったく同じデザインで、中身は日付と曜日だけが入った真っ白なページが続く『マイブック―2025年の記録―』(新潮社)だ。昨年9月末に発売されると、最初の1か月の売上が前年比131.7%を記録し、書店やECサイトでは品切れが続出。現在までに11万部を売り上げているという。
なぜいま手書きの日記帳がヒットしているのか。新潮社の担当者と企画・デザインを手がけたアートディレクター・大貫卓也さんの話から、“ほぼ白紙”のベストセラーを紐解く。
TikTokなどのSNSで大バズり
1999年に誕生した『マイブック』は、そのアイデアの斬新さから、発売当初から話題を呼び、1か月も経たないうちに重版が決定。翌年1月には39万部にも達したという。以来、毎年新しいバージョンが発売され、累計で280万部を突破するベストセラーとなっている。
400ページのほとんどが “白紙”。ページには日付と曜日だけが記載されており、読者自身が「日々の記録」を書き込むことで「世界に一冊だけの“自分の本”を作れる」というコンセプトが支持される『マイブック』だが、とりわけ2025年バージョンは例年以上にヒットしているようだ。都内の書店に勤める磯部さん(仮名/20代男性)が、その人気ぶりを語る。
「例年、10月から日記や手帳類の問い合わせが増えるのですが、今年は『マイブックないですか?』とピンポイントで商品名を名指しされることがよくありました。特に若い女性からの問い合わせが多いです。店頭では、女性4人のグループが全員マイブックを購入し、『自分の日記が文庫本になるのはエモい。みんなで書こうと盛り上がった』と話してくださるケースもありました」(磯部さん)
磯部さんが勤める書店では、『マイブック―2025年の記録―』が2024年12月度の文庫本ランキングで堂々の1位。これほどまでに人気となった背景には、SNSの存在が大きいようだ。新潮社の営業担当・石井光一郎さんが語る。
「『マイブック』を手にしてくださった方がいわゆる“日常垢”(*SNSで日々の日常について投稿するアカウント)で発信し、拡散されているのではないかと考えています。12月中旬にTikTokでバズったことも、注目度を高めるきっかけになりました」(石井さん)
現在TikTok内を『マイブック』で検索してみると、たしかに購入報告や日々のできごとを記したページなどを見せる動画が多数ヒット。なかには140万回以上再生されている動画もある。石井さんによれば、日記や手帳としてだけでなく、ジャーナリング(モヤモヤとした気持ちなどを書き出して整理する作業)やスケッチブック、アイデアノートとして活用されるなど、その汎用性の高さも人気を後押ししているようだ。