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ビジネス
日本の建設業「凄さと課題」

地上450mの東京スカイツリー天望回廊で水洗トイレが使える不思議 「目に見えないところで実はすごいことをやっている」世界に誇る日本のものづくり技術

便器の機能だけでなく設置工事にも様々な工夫

 海外で人気の日本製品と言えばTOTO株式会社の便器です。TOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット(R)」は来日した外国人旅行客が感動する製品の一つでもあります。訪日旅行をきっかけに日本のトイレの良さに気づいた外国人が、海外でTOTOを広めてくれています。例えば、TOTOのウォシュレットはロンドン、パリに約200ある5つ星ホテルの4割超で設置されています。

 そもそも「ウォシュレット」はTOTOの商品名ですが、世界的に普及した結果、「温水洗浄便座=ウォシュレット」という認知を得るまでになっています。1980年の販売開始以降、2022年には国内外累計出荷台数6000万台を突破しています。ウォシュレットを搭載した多機能トイレは日本独特のものであり、TOTOは中期事業計画で「日本の快適で清潔なトイレ文化を世界に広げる」としています。

 ノズルから噴出する温水がお尻に当たって周囲にかからない角度を追究するなど、日本の「職人的ものづくり」が反映されたのがTOTOのトイレです。職人的ものづくりの代表はトヨタ、ホンダをはじめとする自動車ですが、トイレも日本が誇る「職人芸」の一つです。「ジャパンクオリティで空港やホテルを建設してほしい。特にトイレはTOTOで」という海外からのオーダーも日本のゼネコンにはあるのです。

 TOTOの便器にも工夫が凝らされていますが、その設置工事も高度な職人の技術が活かされています。例えば和式トイレを洋式にリフォームする場合、様々な住宅の状況に応じて臨機応変に対応しなくてはなりません。古い家は新築時の図面が残っていない場合もあります。電気配線を切らないように、ここまでは壊して、ここまでは残して、きちんと配管して……というように職人たちは現場ごとに「見立て」、予算や工期など限られた条件の中で「納め」ています。このように建設職人の技術は目に見えにくいですが、皆さんの生活を支えています。

※高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・再構成

【著者プロフィール】
高木健次(たかぎ・けんじ)/クラフトバンク総研所長・認定事業再生士(CTP)。1985年生まれ。京都大学在学中に実家が営んでいた建設業の倒産を経験。その後、事業再生ファンドのファンドマネージャーとして計12年、建設・製造業、東日本大震災の被害を受けた企業などの再生に従事。その後、内装工事会社に端を発するスタートアップであるクラフトバンク株式会社に入社。社内では建設業界未経験の新入社員向けのインストラクターも務める。2019年、建設会社の経営者向けに経営に役立つデータ、事例などをわかりやすく発信する民間研究所兼オウンドメディア「クラフトバンク総研」を立ち上げ、所長に就任。テレビの報道番組の監修・解説、メディアへの寄稿、業界団体等での講演、建設会社のコンサルティングなどに従事。

高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

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