あんなに高いところでなぜ水洗トイレが利用できるのか?
寿司・アニメ・自動車──海外で評価される日本の技術は様々あるが、「建設職人」も大きく注目されている。2025年1月現在、「建築界のノーベル賞」と呼ばれ、世界的な建築家を称える「プリツカー賞」の受賞者が最も多い国は日本だ。また、災害後の鉄道・道路などの復旧スピードも、海外からは「日本の職人は魔法を使えるのか?」と驚きの声があがるという。
いったい、日本の建設技術のなにがそこまで世界的に優れているのか。テレビ朝日系列の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』やABEMAのニュース番組『Abema Prime』で建設業界特集の監修・解説を務め、『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の著書があるクラフトバンク総研所長・高木健次さんが、「日本のトイレ」を例にその“凄さ”を解説する。(同書より一部抜粋して再構成)※高の正式表記ははしごだか【全4回の第1回】
なぜ、地上450mで「水洗トイレ」が使えるのか
突然ですが、皆さんは地上450mの東京スカイツリー(R)天望回廊で、問題なくトイレが使えるのはなぜか、考えたことがあるでしょうか? どうやってあんな高いところに水をくみ上げているのか? 排泄物がものすごい勢いで地上に落下しないのか? その疑問を解決するのが世界に誇る日本のものづくり技術です。
まず、地上450mまで水をくみ上げる技術ですが、貯水槽に中継を設けながら、ポンプで段階的にくみ上げています。次に、排泄物の処理ですが、排水管の内部に設けられた突起や排水管の折り曲げにより、排泄物の落下速度を減速させる排水管が使われています。この技術はタワマン(タワーマンション)他の高層ビルで使われている技術と同じものです。皆さんが高層階で問題なくトイレを使うことができるのは、「目に見えないところで実はすごいことをやっている」企業が日本に多いからです。建築物は「すごい技術の塊」なのです。