「空き家バンク」には様々な活用方法が(イメージ)
団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を迎えた。将来の日本を見据えると、人口減少、大量相続の発生、住宅需要の激減など国の骨格が変わる人口構成の大変化が控えている。その中で対策が急がれるのが「空き家問題」だ。空き家となった実家の処分で悩む人も多いだろう。不動産事業プロデューサー、経済・社会問題評論家の牧野知弘氏の新刊『新・空き家問題──2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)から空き家の処分の有力なツールについて解説する(同書より一部抜粋・再構成)。
地元の仲介業者からも相手にされない物件だが…
空き家をどうしても売りたい。管理や処分に困っている所有者にとって、たとえば親が残した地方の空き家、どう取り扱ってよいのか皆目わからないというのが実情でしょう。
でも地元の不動産屋に持ち込んでも、「このへんはみんな持ち家だから借りる人なんかいないよ」あるいは「もう人が減っているのに家を買う人なんていないよね」と言われるのがオチです。また価値のなくなった不動産はこれを仲介する不動産業者にとっても旨味がありません。
そこで誰からも見向きもされない空き家をまとめて掲載するサイトを作ったのが、空き家バンクです。今では全国各地に空き家バンクがあり、エリアごとに多くの空き家が掲載されています。
実はこのサイトに登録されている物件の多くは、仲介業者からも相手にされないものばかりです。しかし、空き家バンクの役割は単なる仲介ではありません。地元業者だと地域内の不動産しか取り扱っていないので、必然として顧客(この場合は買い手)も同じエリア内のルートしか持ち合わせていません。
空き家バンクは各エリアのサイトを全国的にリンクさせています。つまり全国のいろいろなエリアからアクセスが容易にできるのです。
何が言いたいのかと言えば、移住を考えている人や別荘を探している人にとっては、地域の小さな、よく素性のわからない不動産業者にドアノックするよりもはるかに簡便な方法で、地域に眠る優良空き家の存在をネット上で知ることができるのです。
また、リスクはありますが、サイトを通じて直接売主にコンタクトを取り、仲介業者を入れずに取引を行なうことも可能です。直接取引の妙味は仲介手数料がかからないことです。