2024年4月1日以降に相続した土地は「不動産登記」が義務に(イメージ)
団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を迎えた。将来の日本を見据えると、人口減少、大量相続の発生、住宅需要の激減など国の骨格が変わる人口構成の大変化が控えている。日本全国で九州全土を超える面積が「所有者不明の土地」という現実もある。その中で対策が急がれるのが「空き家問題」だ。相続をきっかけに空き家化していく状況に国、自治体はどのように対処すべきか。不動産事業プロデューサー、経済・社会問題評論家の牧野知弘氏の新刊『新・空き家問題──2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)から2024年4月から義務化された不動産登記の意義について解説する(同書より一部抜粋・再構成)。
所有者不明土地問題はこうして生まれる
所有者不明土地が増える要因の1つが、相続の際に相続人が、所有権移転登記を行なわないことによるものでした。相続で得た大切な財産である不動産を多くの相続人が登記をしていない、そのために登記簿謄本を閲覧しても、現在の所有者が誰であるのか判然としないというものです。なぜ相続人は登記を積極的に行なわないのでしょうか。
まず登記とは、法律上では第三者対抗要件にすぎません。つまり、当該不動産の権利を主張する者が現れた場合、その者に対して、自分が所有をしていることを示して対抗することができるという程度のものにすぎません。
登記はこれまで義務ではなかったので、必ずしもされてこなかったのが実態です。大都市圏にあって不動産価値が高いものであれば、いざという時に備えて自分の権利を主張、対抗できるようにしておくことにはメリットを感じやすいのですが、たとえば親から先祖代々のものだからと言って引き継ぐ地方の山林、あまり買い手がいそうにないような田畑などの不動産はあえて登記をしておこうという動機づけがそもそもなかったのです。
さらに登記が進まない理由としては、登記した際には登録免許税という税金が課されます。税率は固定資産税評価額の0.4%。地方の土地でも面積が大きければ意外と金額は膨らんでしまいます。
登記にあたっては手続きも複雑で、戸籍謄本や登記事項証明、住民票などの必要書類を揃えなければならず、少なからず費用もかかってきます。手続きするためには、自分でもできますが、司法書士などに頼めば手数料を支払わなければなりません。そうした費用をかけてまで、自分の所有を表明する必要を感じない不動産では、登記が行なわれずにきたのが実態です。
そのうち、相続が度重なり、所有権がどんどん分散化、細分化され最終的に誰がどのくらいの権利を持っているのか全容がつかめなくなってしまうのが所有者不明土地問題です。