1月28日、経済アナリストの森永卓郎さん(享年67)が逝去した。2023年11月にすい臓がんのステージIVと診断(その後、原発不明がんと診断)された後も、精力的に活動し続けた森永さんが遺した“最強の生き方”とは。亡くなる直前に本誌・週刊ポストに寄せられた森永さんの言葉から振り返ってみよう。
自ら実践した「トカイナカ生活」
最後まで経済アナリストの立場から経済政策にもの申し、日経平均が4万円を超えるなかでも、新NISAによる投資ブームにただ一人警鐘を鳴らし続けた森永さん。週刊ポスト2024年10月4日号では、その理由をこう語っていた。
「バブルが弾けると大衆は軒並み破産状態になり、得するのはバブルの期間に手数料をとり続けた運用会社などの“胴元”だけ。(中略)近い将来、財産の大部分を失い、暗い老後を過ごさざるをえなくなる人を一人でも救うこと。それが私に残された短い人生の役割だと強く思っている」
お金は使い切ってから死ぬべきだというのが森永さんの持論だった。
「私はがんと診断されるずっと前から、生きているうちに使い切ることを意識してきました。ひとつは相続面での煩わしさから子供たちを解放してあげたかったから。(中略)そもそも子供の扶養義務は成人するまでと考えているので、子供が成人したら投資も保険も必要ありません。そういったことに使うお金があるのなら、自分や配偶者のためだけに使うほうがいい」(2024年9月13日号)
日本人の年金受給額(夫婦総額)は平均月22万円。世の中には「年金だけでは足りない」とする言説があふれ、お金を使い切ることに不安を抱く人がほとんどだろう。そんななか森永さんが「物価高でも月15万円で豊かな暮らしはできる」(本誌2025年1月3・10日号)と提唱し、自ら実践したのが「トカイナカ生活」だった。
「埼玉県所沢市の最寄り駅から徒歩15分以上かかるところに住んでいますが、戸建てやマンションの価格、賃貸の家賃は都心の10分の1程度。物価も都心より3割くらい安い。近隣の農家が作った農作物を直接安価に買うこともできます」(同号)
自宅近くに畑を借りて20種類もの野菜を栽培。家族が食べる分は自給自足で、食費は半分以下になったという。
「その結果、生活費は月10万円程度に収まっています。トカイナカ生活なら月22万円どころか、月15万円程度の年金収入でも問題なく生きていけるはずです」(同号)