2024年の秋に登場し、売れ行き好調のマツダ「CX-80」といえば、マツダの国内最上級モデル、つまりフラッグシップSUVだ。国内最大級のサイズ感と上質な仕上げのエクステリア。3列シートを備え、6人あるいは7人乗りを可能にした居住空間は、細部まで丁寧に作り込まれ、プレミアムにふさわしいくつろぎの空間を実現。そしてパワーユニットは、走りにこだわるマツダらしく3タイプを準備した。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は自動車ライターの佐藤篤司氏がCX-80を試乗レポートする。
選ぶのに困るほど多彩な仕様が揃う
最初に少し整理しておきましょう。このSUVの「CX-80」はマツダの社内的な呼称ですが「ラージ商品群」と呼ばれる区分に入ります。2022年に、同じプラットフォームを採用してデビューした5人乗りの「CX-60」は、このラージ商品群第1弾ということになります。つまりCX-60のロングボディモデルが、今回の「CX-80」といえる関係性です。
次に「CX-80」に用意されたエンジンですが「3.3Lの直列6気筒ディーゼル」、「3.3Lの直列6気筒ディーゼルのマイルドハイブリッド」、そして「ガソリン2.5Lの4気筒プラグインハイブリッド(PHEV)」の3種。ディーゼルエンジンには前輪駆動(以下、FF)と4WDモデルが用意されていますが、マイルドハイブリッドモデルとPHEVモデルは4WDのみとなっています。こうしたバリエーションは現時点で全18種類。2列目シートの作りが3タイプあったりします。
そしてもっとも気になる価格帯を見るとディーゼルエンジンモデルのXDの394万3500 円からガソリンエンジンのPHEVモデルの712万2500円 までと、かなりの幅がありますから、なかなかに悩ましい選択になりそうです。
そんな中からもっとも「CX-80らしい仕様ではないだろうか」ということでセレクトしたのはマイルドハイブリッドの「XD-HYBRID Premium Sports」、価格は632万5000円です。
プレミアムに入るモデルですから、さすがにエクステリアのデザインや質感、そして仕上げにおいてグレードによって大きく差を作るようなことはありません。CX-60より25cmほど全長が延びて、なだらかなルーフラインがさらに強調されたエクステリアは、バランスも良く好印象を受けました。そこにプレミアムスポーツ仕様に与えられたブラックペイントのホイールのお陰で足元が引き締まって見えます。
そんな外観の作り込みの良さをチェックしながら、ドライバーズシートに腰を下ろします。この時点で視界に入ってくる景色は弟分のCX-60と、違いがよく分かりません。同じプラットフォームを使っているのですから、Bピラーまでの前半分はほとんど同じ景観も仕方がないかもしれませんが、かと言って不満はありません。インパネもセンターコンソールも内張も、細部までキッチリと作り込まれているので、安っぽさやプラスチック感が勝っているような印象はほとんどありません。この上質なキャビンであれば、プレミアムSUVと呼ぶにふさわしい仕上がりだと思います。
ここで2列目のシートを見ると2人掛けシートです。つまり6人乗りです。普段、リアシートの使用頻度は高いが、3人が肩を寄せ合って窮屈に座ることは少ないなら、センターコンソールを備えた2人掛け2列目シートを選択。足元も広々としていて格段にプレミアム感は上がります。仮に4人以上が乗車するとなれば、予想以上に深く腰が掛けられる3列目にお願いしてみましょう。さすがにくつろぎ感たっぷりでロングドライブも楽々、とはいきませんが、空間設計をゼロから見直したと言うだけに、短距離ならば大きなストレスを感じることはないと思います。