コーチから再度野球を誘われた少年は嬉しそうに駆け出していく(ACジャパンホームページより)
「中学受験」で好きなことを諦めさせられるのは“あるある”か
そんなCMの少年に自分を重ねたというMさん(40代/男性)が、その経験を語る。
「小学校の時、少年野球チームに入っていましたが、5年生の夏休みが終わると、中学受験のために有無を言わさず野球を辞めさせられました。私は5年生で唯一のレギュラーで足も一番速く、チームの主力。野球を辞めるのも辛かったですが、急にチームを辞めたので友達から無視されるようになり、卒業後は逃げるように私立中学に進みました。そんな経験はとっくに忘れていましたが、ACジャパンのCMを見た時に突然思い出し、泣きそうになりました」
中学受験には合格したとはいえ、野球からは「すっかり足が遠のいた」というMさん。
「一度途切れた気持ちを持ち続けるほど、自分の情熱が強くなかったともいえますが、今も“ちょっともったいなかったな”とか、思ってしまいますね」
野球ではないが、中学受験をきっかけに、似たような経験をした人はいる。Oさん(30代/女性)は、「私の場合はバレエだった」と振り返る。
「3才でバレエを始めましたが、小学校5年生の時、『これからは勉強しなくちゃダメ』と、親が勝手にバレエ教室に電話して、辞めさせられてしまいました。私は泣きながらバレエをやりたいとお願いしましたが、返事は『もう十分やったでしょ』。教室は車で送ってもらわないと行けない場所なので、親の協力無しには行けません。そもそもバレエは親の勧めで始めたのに、始めるのも勝手、辞めさせられるのも勝手だったことは今でも恨んでいます」
大人たちに向け、子どもへの虐待になっていないかどうかを考えさせるCMだが、SNSにも〈トラウマにドストライクすぎてめっちゃ流れ弾〉という声があがるなど、むしろ自身の幼少期の記憶を呼び覚まされたという人は少なくないようだ。
ただ、親にやりたいことを諦めさせられた人たちが、恨み言ばかりを言っているわけではない。後編記事《ACジャパンの“教育虐待”テーマCMに交錯する思い 好きなことを続けたかったけど…「あの時、親に諦めさせられてよかった」と振り返る人たち》では、「夢を諦めさせてくれた親に感謝」する声を紹介する。