音大に進みピアニストになりたかったが…
Fさん(50代/男性)は音大に行きたいという夢があったが、親に諦めさせられた経験がある。そこには金銭的な事情があった。
「僕がピアノを始めたのは小学2年生の時。将来ピアニストになりたいと思っていましたが、リアルに進路を考える段階になって、『金銭的な事情から音大進学は無理だ』と親にハッキリ言われました。レベルが上がるにつれて教室に通う頻度が増え、経済的な負担が重くなっているのは子供心にもわかっていましたし、音大の学費も高い。さらに当時の僕ぐらいの練習量や腕前でプロとして食べていくのは至難の業だと親に説得され、普通の大学に行きました」
Fさんは、「客観的にお金がなかったことで、趣味として楽しめばいいやという気持ちになり、諦めがつきました。今は電子ピアノを買い、適度な気分転換となっています」と言い、「経験は無駄ではなかったですね。むしろピアノを習っていたからこそ、すごい人がたくさんいるのも知ったし、今でも趣味として活かせる」と恨み節は一切ない。
プラモデルを取り上げられて“得たもの”
Kさん(40代/男性)は尻を叩いて勉強させられたタイプ。その背景には、「親の失敗経験があった」とKさんは言う。
「子どもの頃、勉強も運動もダメで、好きだったのはプラモデル。プラモデルばかり作っていましたが、小学校高学年になったらプラモデルを取り上げられ、強引に塾に通わされ、中学受験をさせられました。はっきりいって僕の中学受験は、親が学歴で失敗した経験があったからだと思っていますが、結果的に第一志望の難関校に合格し、ものすごく自信がついて、その経験は今でも大事な糧になっています」
ちなみにプラモデル作りは、「合格したらいくらでも作っていい」という条件だったという。
「条件があったのは大きいですね。何かにものすごい才能があるわけでもない限り、勉強をしていたほうがいいのは間違いない、と今なら思えます。子どもが好きなことをやらせるのも良いですが、そうは言っても子どもは視野が狭いので、ある程度、親が導くのも大事。全部取り上げるのではなく、ある程度余地を残しつつ、選択肢を広げてあげられるのがベストじゃないかと思います」
ACジャパンのサイトでは、「教育なのか虐待なのか?その線引きは非常に難しいですが」「子どもとコミュニケーションをよくとり、“心の行間”を読み取ることが大切です」と、丁寧に伝えている。正解がひとつではないからこそ、このCMを見て様々な思いを抱く人がいるのだろう。
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