日米首脳会談を終えた今後の展望
トランプ大統領の関税政策の動向は、日本の自動車メーカーにとって大きな試練となる。その懸念からも自動車関連株は大きく値を下げていると言えるだろう。
しかしながら2月7日に行われた今回のトランプ大統領と石破首相の首脳会談は、トランプ大統領から「関税」という直接的な措置については触れられることがなく、ひとまず成功に終わったと見てよいだろう。
「対日貿易赤字を解消したい」との発言をしたトランプ大統領に対し、石破総理は、「日本が対米投資世界一を5年連続」継続していること、「防衛力強化の方針」、今後もいすゞ、トヨタなどを筆頭に「1兆ドル(約150兆円)規模にまで投資拡大」「アメリカからLNG(液化天然ガス)の輸入を増やしてエネルギー安全保障を強化する」という考えを示した。
日本の会社がアメリカに現地法人を設立することは、アメリカの雇用促進に資するだけでなく、貿易収支についても計上されず、アメリカの赤字が増えることはない。
もちろん、これによって円安がさらに進む構造になるという課題は残るが、アメリカに進出している各社にとっては業績成長や株価上昇の好材料になり得るだろう。
このように、同じ自動車業界でも個々の企業の戦略や市場環境によって、関税政策の影響が大きく異なることが分かる。
投資家にとっては、単に「自動車株全体が下落した」という視点ではなく、各企業のビジネス構造を細かく分析し、それぞれの戦略に応じた投資判断を行うことが重要だ。また、今回の関税措置の動向は、日米間の問題で収まるものではなく、日本が拠点を置いている全ての国々と米国間の動向も大いに影響することから、今後も予断が許されないものとなるだろう。
【プロフィール】
古賀真人(こが・まさと)/個人投資家、経済アナリスト、会社経営者、投資系YouTuber。1978年、埼玉大学経済学部卒業後、国内大手金融機関、外資系金融機関勤務を経て独立し、株式会社ライフサポートを設立。25年以上の株式投資経験を活かし、チャート分析からはわからない経済分析、個別企業分析をYouTube「カブアカちゃんねる」で展開。全決算を最速分析しているnote「カブアカマガジン」(https://note.com/masatokoga)を日々更新中。