政府備蓄米の放出について発表する江藤拓・農林水産相(時事通信フォト)
続々と現れた“新規の卸売業者”
米の流通は、農家が農協(JA)に卸し、そこからスーパーをはじめ小売店の店頭に並ぶのが一般的だが、他に農家が農協を通さず卸売業者と直接取引するルートもある。この流通経路に異変が起きていると明かすのは、東北地方のある米農家だ。
「昨年夏以降、“新規の卸売業者”が続々と現われて、農協よりずっと割高の値段を提示してくるようになったんです。農協に卸す値段の2割増し、3割増しの金額を提示してくる業者もあるそうで、なかには農協を見限って新規の卸売業者に乗っかる農家もいると聞きます。
うちにも一度、米関係の商社を名乗る聞いたことない業者から電話があって、『米を売ってくれないか』と。農協との付き合いを大事にしたいので断わったんですが、正直に言って、収入面を考えたらそっちに売ったほうが儲かります」
こうした新規事業者は、米どころか農業とも無縁の事業を営んできた者が少なくないという。
「それこそアパレルとか繊維とか、全然違うジャンルの商社が米騒動に目を付けて、儲かりそうだと参入しているようです。米を単なる投機対象としてしか見ていない、マネーゲームの延長なんでしょうね。そういう業者が“まだまだ価格が上がる”と踏んで、農家から買い取った米を売り渋っているから市場に米が出回らず、高騰が続いているのだと言われています」
後編記事《【令和の米騒動】“転売ヤー”増加でフリマサイトでは「1kg5000円」の出品、米農家らしきアカウントの出品者も 備蓄米放出でも解決しない日本農業の根本的問題》では、個人でフリーマーケットサイト上に出品する“転売ヤー”の存在や、米高騰に関する農水省の見解などについて詳報する。
※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号