日産自動車の経営陣に苦言を呈すカルロス・ゴーン氏
わずか1か月半で「破談」に終わったホンダと日産自動車の経営統合協議。日産はパートナーを失い、再び経営危機に立たされている。かつて、経営トップとして日産を破綻寸前の危機から救い、その後に“追放”されたカルロス・ゴーン元会長は、この現状をどう見るのか。レバノン・ベイルートのゴーン氏にリモート・インタビューを行なった。ここでは、日産の課題と経営陣について、ゴーン氏の見解を紹介する。
「私が18年間行ってきた仕事はすべてムダに」
──日産の課題は具体的に何か。どこで道を誤ったと見ているか。
「北米市場での販売不振が言われているが、問題はそこだけではない。欧州や中国市場にもある。収益性が高い中東でもシェアを落としている。米国に焦点を当てれば、私が2018年に逮捕された後に日産を去った元CPO(最高製品責任者)のホセ・ムニョス氏が、韓国・現代自動車の北米トップを経て、今年、同社CEOに就任した。同氏のもと、現代自動車は北米で日産を完全に凌駕した。
北米での日産の不振はハイブリッド車(HV)が足りないとか、ブランドが弱体化しているという問題ではない。HVがなければHVをつくればいい。ブランドが弱ければ強化すればいい。日産の問題は、明確なビジョンを持たない“弱い経営陣”にある。意思決定プロセスが非常に弱い。
それはCEOや執行委員会だけでなく、取締役会のことだ。彼らはこの6?7年間、決断力を欠き、たびたび間違った方向に舵を切ってきた。『日産は台数を求めすぎていた』とか、過去の言い訳に時間を費やしているが、毎年新しい挑戦があり、それに立ち向かい、毎年、解決策を見つけるのが経営だ。彼らはそれをせず我々が今、見ているような結果をもたらした」