元社員のインサイダー取引疑惑をめぐり謝罪する三井住友信託銀行の大山一也・社長(中央。時事通信フォト)
金融業界で「インサイダー取引」が相次いで発覚している。いずれも上場企業の「TOB(株式公開買い付け)情報」を公開前に知る立場にいた人物が、不正な株取引で利益を得ていた。【前後編の前編】
証券取引等監視委員会(監視委)は今年2月、金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で、三井住友信託銀行の元社員の関係先を強制調査した。元社員は業務で知った未公開のTOB情報をもとに株取引を繰り返し、3000万円近い利益を得たとみられ、昨年11月に懲戒解雇されていた。
同行は取材に「現時点では組織ぐるみの事案ではないと認識していますが、原因などは新たに設置した委員会で調査し、調査結果を踏まえた再発防止策を検討します」(広報室)とコメントした。
TOBとは、企業買収などを目的として、「買付期間」「買付価格」「買付予定株数」などを公開のうえ、市場外で株を買い付けることを指す。買付価格は市場価格より30~40%高く設定されるのが一般的で、TOBの情報を把握していれば、事前に株を買い、確実に高値で売却できるわけだ。
そうした手口の事件が相次いでいる。
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