豊かに暮らすための「60歳以降のお金の使い方」とは(写真:イメージマート)
人生後半戦の本番が始まる60歳以降について、精神科医でベストセラー作家の和田秀樹氏は、「従来の常識をリセットすれば、これまで以上に充実した人生を送ることができる」と断言する。数多の高齢患者と接してきた和田氏が語る、「幸齢者」に共通する“お金の極意”とは──。
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人生最大の分岐点はどこかと問われたら、私は「60歳」と答えます。男性ホルモンのテストステロンが減少し、意欲や体力が有意に低下します。その上、この時期は定年退職と重なってライフステージが大きく変わり、社会との接点を失いやすく、急速に老化しやすい。
高齢者専門の精神科医として約35年間にわたり、医療現場で6000人の患者を診てきた経験から、60歳を過ぎてなお健康でハツラツと生きている人の共通点が見えてきました。それは、何事も我慢せず、好き勝手に生きていること。私は幸せを感じながら老後を生きる「幸齢者」という概念を提唱しており、人生後半戦を「幸齢者」として生きるキーワードはこの「好き勝手」にあるのだと分かったのです。
この時期に大切なのはお金や健康、人間関係や老後の備えなど、これまで抱えてきた「常識」や「しがらみ」をリセットすること。まずは多くの人が不安を抱えるお金の話をしましょう。
「お金を多く持っている人」よりも「お金を多く使った人」のほうが幸福度は高い
60歳を過ぎて真っ先にやめるべきは、「倹約は美徳」を是とする生き方です。金融庁による「老後資産は2000万円不足する」といった試算に加え、子に財産を遺そうと切り詰めて節約生活を送る人が多いですが、お金は持っているだけでは豊かになりません。私の経験上、「お金を多く持っている人」よりも「お金を多く使った人」のほうが明らかに幸福度は高い。
内閣府の経済財政白書(2024年)によれば、日本人は平均して1500万円ほどの金融資産を残して死んでいくと言います。実際、私が見届けた多くの患者は、亡くなる前に「お金をもっと使っておけばよかった」と後悔していました。「将来が不安だから」とお金を貯め込んでも、気が付けば体の自由が利かなくなって海外旅行も行けず、美食を楽しめる胃袋も気力も無くなってしまう。