中国のアニメ映画『ナタ2』が記録的な大ヒットとなっている(Getty Images)
中国で春節(1月29日)に公開されたアニメ映画『哪吒之魔童閙海(ナタ2:悪魔の子ナタ海で大暴れ)』(以下『ナタ2』)が記録的な興行成績を収めている。
グローバルでの記録データ管理機関であるForbes World Records Certificationによれば2月7日、『ナタ2』の映画チケット販売額(予約を含む)は67億9220万元(1426億円、1元=21円)に達し、単一市場では2015年12月に公開された『スターウォーズ/フォースの覚醒』を抜き、世界最高額となった。
その後も興行収入は伸び続けており、グローバルにおいても記録的な大ヒットとなっている。灯塔専門版によれば2月17日、グローバル映画チケット販売額は121億2000万元(2545億円、1ドル=152円)を超え、2015年6月公開のジュラシックワールドを上回る歴代9位となった。もちろん、アメリカ映画以外ではトップである。
米国での公開は2月14日からで、香港での公開は2月18日からだ。中国国内でもまだ増加の余地はあり、最終的なグローバル順位はもっと上位に食い込むと予想される。
なぜ記録的な大ヒットとなったのか。とにかく内容が素晴らしいと評価する中国人は多い。2019年に公開された『哪吒之魔童降世(悪魔の子ナタ降臨)』が第1作で、今回はその続編であり、明代の神話故事「封神演義」の「ナタの物語」が基礎となっている。「神、仙人、妖怪、人間の間で繰り広げられる戦い」といった設定が中国人にとってはわかりやすく、なじみが深い。(以下、一部ネタバレを含みます)
天地の間で一粒のエネルギーに満ち溢れた混元珠が誕生したが、元始天尊がそれを魔王となる宿命を背負った魔丸と、英雄となる宿命を背負った霊珠に分離した。元始天尊は弟子の一人である仙人の太乙真人に命じ、霊珠を総兵(地域の兵隊を束ねる武官)夫婦のこれから生まれる子供の魂として与えるように命じたが、もう一人の弟子である仙人の申公豹の陰謀によって魔丸とすり替えられてしまった。
第1作はこの悪の魂を持って生まれ、3歳の誕生日には天から制裁され、抹殺される運命のナタがその宿命に逆らい、親友となった霊珠を魂に持つ龍王の息子アオビンと助け合いながら生き残るまでの物語であり、今回の第2作は第1作で肉体が滅び、魂となったナタが蘇生に失敗したアオビンをもう一度蘇生し直すために奮闘するところが前半で、後半は思わぬ相手が真の敵であることがわかり、その強大な敵をアオビン、龍王やその仲間たちと助け合いながら打ちのめすといった大筋だ。
主人公のナタは粗暴で態度が極めて悪く、その上、社会のルールを一切守らないが、最低限の良心は持ち合わせている。頭が良くて、若くて(3歳)ずば抜けた攻撃力を持っているといった如何にも中国人好みのキャラクターだ。わかり易くて受けの良いストーリーを最新のAIを使って、とにかく迫力満点に仕上げたところが成功の秘訣だろう。