アニメ映画の興行収入歴代1位の『インサイド・ヘッド2』に迫る勢い(Getty Images)
登場人物はほとんど男子で女友達すら登場しない
第1作は最終的に50億3500万元(1057億円)のチケット販売収入を記録しており、当時の国内アニメ映画としては記録的な大ヒットとなった。第2作はその人気が土台となり、さらに大きな人気を博している。
マスコミ報道などによれば日本最大のアニメヒット作は2020年に公開された劇場版『鬼滅の刃』無限列車編でグローバル興行収入は約517億円だ。中国を除くグローバルでは日本のアニメ映画は圧倒的な人気を誇るが、数字だけを比べると、中国国内映画市場の大きさが際立つ。
日本のアニメ業界にとって、『ナタ2』が中華圏以外でヒットするかどうか、気になるところであろうが、第1作をPCで、第2作を劇場で見た筆者の感想からいえば、中国人受けが良いことはよく理解できるが、外国人がどの程度評価するのかについては微妙なところだろう。
一番気になったのは、細部ではあるが登場人物の所作が不衛生で、視聴者に嫌悪感を与えかねないところだ。また、登場人物は男子がほとんどで、この手の映画で定番となる女友達すら登場しない。親子の深い愛情、強い絆で結ばれた友情はよくわかるが、それを強調し過ぎるし、何といっても既視感が強い。さらに、ひたすらステージを変えて戦い続けるといった構成は格闘系アクションRPGのようでもある。
中国メディアの中には「米国での上映劇場数が少な過ぎるのはおかしい」「アジア人、中国人に対する偏見があるのではないか」といった意見もみられるが、中国の価値観から生まれるこうした所作、単純なストーリーが日米欧などの社会では受け入れられにくいということが最大の原因ではないかと思う。とはいえ、世界各国に散らばる中国人留学生、華僑の間では絶大の人気を博しているようだ。
ネガティブな点ばかりを指摘したが、総合的には高く評価したい。巨額の資金と長い製作期間を投入して作り上げたAIを駆使したスケールの大きな映像表現は圧巻だ。その上、見終わった後の爽快感は大きい。“宿命など自分たちの知恵と努力で覆せる”、“既存の価値観、秩序、体制が絶対的に正しいわけではなく、何が善で何が悪なのかは自分たちが決める”、“どんなに敵が手ごわくても、絶対にあきらめず、打ち砕く”などといった制作者たちの強い気持ちが作品の中に満ち溢れているようにも見える。