観客は子供とその両親世代に限らず、20~30歳台のカップルも多く、意外に幅広い。だからこそ、これだけの興行成績を短期間で残せたのであろう。また、毎日のようにマスコミがこの大ヒット作について大きく取り上げ、記事にしている。こうした状況をみると、映画の中の世界観と現代中国社会の世情とが同期しているのではないかと思う。現在の日本人にとってはどういった世情なのか想像しにくいかもしれないが、あえて言えば、燃える闘魂・アントニオ猪木の熱狂的ファンが多数存在した昭和40年代後半からバブルにかけての日本といったところだろうか。
米国からハイスペック半導体の供給を止められ、致命傷とも思われるダメージを受けてもそこから復活した華為技術(ファーウェイ)、電池メーカーから身を起こし、今や新エネルギー自動車で世界最大規模の販売台数を誇る企業にまで成長したBYD、設立から僅か2年足らずでAI業界における米国の独走を崩したDeepSeekなど、中国でイノベーション企業が次々と生まれてくる背景には、このエネルギーと自信に満ち溢れた社会の存在があるからではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。
【*2月19日追記:記事公開時点では、「哪吒」の現地読みでの発音に合わせて作品名を『ナーザ2』と表記していましたが、日本での表記に合わせて『ナタ2』と変更いたしました】