2000年代初頭に経産省米州課長として鉄鋼摩擦の対応にあたった明星大学教授・細川昌彦氏
自国への除外を要求するだけの外交に終始する日本
ちなみに注目の自動車に対する関税を発表したトランプ氏が、「やるのは4月2日ごろからだよな」と同意を求めて振り返った時、その相手は、商務長官のハワード・ラトニック氏でした。ベッセント氏と同じ「親ビジネス派」ながら、少し毛色の違う人物です。
ラトニック氏は投資銀行トップも務め、大口献金を行なってきたことでも知られています。野心家でナバロ氏が主導する状況に、巻き返しの機会を狙っていたはず。ラトニック氏の持論は自動車関税で、とりわけ狙いは日本です。
心配なのは、日本政府の対応です。岩屋毅外相は、マルコ・ルビオ国務長官に適用除外を求めていましたが、ルビオ氏は“関税をめぐる綱引き”の当事者ではありません。やっと人事が承認されたラトニック氏に対してカウンターパートの武藤(容治)経済産業大臣がどうやり合えるかがポイントです。
また、カナダとEUは早速、首脳レベルで対応策を話し合っているのに、日本は自国の除外を申し入れただけ。米中対立の世界で、自国だけ免れればよいと考える発想ではとても生き残れません。ルール重視と唱えるならば、WTO(世界貿易機関)提訴も視野に入れて国際連携をしながら、同時に交渉もするしたたかなセンスが不可欠です。
反対に、「外交タカ派」のルビオ氏や国家安全保障担当補佐官のマイク・ウォルツ氏は、日中首脳会談に前のめりになっている石破政権のことを冷ややかな目で見ていることも見逃せません。
トランプ大統領との首脳会談が波乱なく終わってホッとしているだけではいけない。閣僚レベルではどういう目で見られているか、そうした自覚がないことが、現状の日本の危ういところだと私は見ています。
■細川昌彦氏インタビュー前編:日本製鉄・橋本英二会長がトランプ大統領との“直接ディール”へ 日米鉄鋼摩擦の交渉にあたった元経産官僚が読み解く「石破政権、日鉄に足りないもの」
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現在、「マネーポストWEB」では、日本製鉄側の最大のキーマンである橋本会長のインタビュー記事4本を全文公開している。関連記事『【独占インタビュー】日本製鉄・橋本英二会長「USスチールの買収チャレンジは日鉄の社会的使命」、社内の賛否両論を押し切った決断の経緯』などで、海外に打って出て成長にチャレンジする必要性が語られている。