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田代尚機のチャイナ・リサーチ

DeepSeek登場で加速する「米中AI開発競争」 最速でシンギュラリティ到達に向かう米国と、社会実装を急ぐ中国の“方向性の違い”

米中AI開発競争の方向性の違いとは(Getty Images)

米中AI開発競争の方向性の違いとは(Getty Images)

 DeepSeek(DeepSeek-V3、より深く考えるDeepSeek-R1、Web検索といった3つの機能を持つ無料Webバージョン、V3で質問)に「あなたが昨年の中国大学入試試験(高考)を受けたとすれば何点取れたか」と尋ねると、「数学は満点(150点)、国語(中国語)、英語はそれぞれ150点中140点以上、理科(物理、化学、生物)や文科(歴史、地理、政治)は300点中270点以上だっただろう」と応えた。これは、北京市の学生であれば、理系であろうと文系であろうと、清華大学、北京大学、復旦大学、浙江大学、上海交通大学などの最難関大学で合格が可能なレベルだ。

 保険業を中心に、商業銀行、投資銀行など総合金融サービスを手掛ける平安保険の関連会社で、企業、個人向けに健康診断や健康相談を行ったり、提携先医療機関の医師に医療関連情報を提供したり、インターネット上で医薬品を販売したりする平安健康医療科技という企業がある。医療関連データを電子化し、AIを積極的に活用することで診療支援を行うシステム「AI Doctor」を2018年に開発、診療前、診療中、診療後のすべての工程でAIを用いた医療ソリューションを提供するユニークな企業なのだが、同社はいち早くDeepSeekを導入した。

 入手可能なあらゆる医学書を学習させるのはもちろんだが、公開データに加え、顧客データ、提携する医療機関が保有する大量の医学データを分析させ、治療対象患者のX線、CT、MRIなどの画像処理能力を強化することなどによって、医師が行う医療行為を強力に支援したり、健康診断の精度を高め、健康管理に関する提案の質を高めたりするのに役立てている。

 今や世界最大の新エネルギー自動車メーカーとなったBYDだが、王伝福会長は2月10日、「今後2~3年もたてば、自動車におけるスマートドライブシステムはシートベルトと同じような存在になるだろう」と発言した。完全自動運転の実現に向けて独自システムの開発を進める同社だが、そのナビゲーションフレームにDeepSeekをAPI連携している。

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 今や先端AIは中国の一流大学に入学できるレベルに達している。命令に絶対服従のAI従業員が格安で、しかも必要であればいくらでも投入できる。中国では、アリババや百度(バイドゥ)など、DeepSeekと直接競合関係にあるような企業を除き、中小規模のソフトウエア開発、クラウド関連企業から、大規模のICT、金融、医療、さらにはメーカー、流通など広範な産業の主力企業において、一瞬のうちにDeepSeekが浸透した。AI革命が大きく加速し始めている。

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