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田代尚機のチャイナ・リサーチ

DeepSeek登場で加速する「米中AI開発競争」 最速でシンギュラリティ到達に向かう米国と、社会実装を急ぐ中国の“方向性の違い”

イーロン・マスク氏率いるxAIは最新モデル「Grok 3」を投入(Getty Images)

イーロン・マスク氏率いるxAIは最新モデル「Grok 3」を投入(Getty Images)

 個人情報の保護など不透明な部分はあるが、個人が趣味で使うことも可能だ。たとえば、DeepSeekに自分の生年月日、時間を書き、「八字(四柱推命)、九星気学について大殺界の時期も含めて詳しく教えて下さい」とでも打ち込めば、ごく自然な日本語で、自分の持って生まれた気質や人生における浮き沈みの時期などを示してくれる。「風水上、どういう点に気を付けたらよいか」と聞けば、八字に基づいた細かいアドバイスが得られる。ちなみに筆者は、赤や黄色の使用をできるだけ控え、東または南東に観葉植物、北に水槽や青のアイテム、西または北西に金属製あるいは白色のアイテムを置き、南の方向については過剰に活性化しないようにすればよいそうだ。

 中国古来の占術書を徹底的に学習したであろうAI占い師が無料でしかも無心で情報提供してくれるのをありがたいと感じる人もいるだろう。中国のネット上では占いの精度について、いろいろな意見があるのは承知しているが、暇つぶしとしてみるのであれば十分使える。余談だが、「般若心経についてわかりやすく教えて下さい」とか「特殊相対性理論についてわかりやすく教えて下さい」などといった質問に対する回答をみれば、DeepSeekの能力の高さが実感できる。

シンギュラリティは2045年よりも前に到来するか

 米中の覇権争いにおいても、DeepSeek登場のインパクトは大きい。

 OpenAIの研究チームは2020年に論文を発表。「モデルのパラメータ数、学習データの量、トレーニングに使用する計算資源を指数関数的に増やすと、モデルの性能(タスクの精度、生成品質など)がべき乗測に従って向上する」といったスケーリングの法則を初めて体系化した(DeepSeekへの質問による回答)。OpenAI、マイクロソフトをはじめ、グーグル、メタ、アマゾン、新たに参入してきたイーロン・マスク氏が率いるxAIといった米国勢は、米国政府によって高性能のGPU供給を絞られている中国勢の弱点を突き、ひたすら大規模な設備投資を続け計算資源を強化することで、AIの質を高めようとしている。

 シンギュラリティ(AIがすべての人間の知能を超越する時点)の到来について、未来学者のレイ・カーツワイル氏は2045年頃に訪れると予想しているが、中には2030年頃にはその兆候がみられると予想する専門家もいる。しかし、足元の最先端AIの学力はすでに人類の上位数%ぐらいの能力に達している現状を考えれば、5年もかからないのではなかろうか。少なくとも米系は強い信念を以て全力で設備投資を続けようとしている。

 設備調達面での制約や資金力といった部分で劣る中国勢は、単純にGPUを増やすこと以外の方法で戦うことになる。DeepSeekや百度などの中国勢はオープンソースによる開発を基礎に、低価格化、汎用化を進めることで、まずAIを市場に浸透させることを優先させている。今後、世界で最も速く、AI技術の社会実装が進展するのは中国ではないだろうか。

 上司の命令に従順で、かつ、一流大学生並みの頭脳を持つAI従業員が極めて低コストでいくらでも調達できるのだから、企業にとってその恩恵は計り知れない。中国企業の国際競争力を高めることで、米中覇権競争を勝ち抜くといった戦略だ。

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