EMシステムズ(4820):市場平均予想(単位:百万円)
企業概要
EMシステムズ(4820)は、調剤薬局薬局向けシステムや医科システムを展開するITサービス企業。薬局向けのレセプトコンピュータやクリニックで使用される電子カルテなど、医療関連の情報処理用システムを開発・販売しています。
展開する主な事業は、調剤薬局向けシステムを提供する「調剤システム事業」事業、診療所・クリニック向けに電子カルテなどのを提供する「医科システム事業」、介護/福祉福祉サービス事業者向けの「介護/福祉システム事業」の3つで構成されます。
2024年12月期におけるそれぞれの売上構成比は、調剤システムが79%、医科システムが14%、介護・福祉システム3%でした。またその他事業として薬局経営なども行っており構成比は4%でした。
主力の「調剤システム事業」事業で提供する主な製品は、薬局向け業務支援システム「MAPs for PHARMACY」、業務支援BIツール(データ収集分析)・処方箋読取システム、レセコン一体型の電子薬歴システム「Recepty NEXT」など。
保険薬局向けのレセプトコンピュータにおいては40%超のシェアを占める業界のリーディングカンパニーとして知られます。
業界シェアについては、調剤で43.9%(24155件)を獲得しています(2021年末では35.6%)。さらに2024年度にグッドサイクルシステムとユニケソフトウェアリサーチを子会社化したことにより、シェア50%を獲っていける可能性が高まっているとのこと。
また、医科システムでは3.5%(同3158件、3.1%)、介護/福祉5.7%(同14362件、5.7%)と報告されています。
注目ポイント
調剤薬局向けシステムで業界40%以上という圧倒的シェアを獲得するに至ったのは、早期に築き上げた価格競争力が強みとなったようです。
医療機関が医療用オフィスコンピューターの導入を進めていた2009年頃、同社は初期費用が高いオフコンそのものの販売から、ソフト販売に切り替えました。また自社開発品に舵を切ったこともあり、当時500~600万円した医療用システムが、同社なら300万円という値段で販売することができました。
圧倒的価格競争力によって製品の普及に成功したわけです。さらに、業界に先駆けて売り切り制から従量課金制を採用したことも価格競争力を一層高めることとなりました。
特に、売り切り型のフロー型ビジネスモデルから処方箋の処理枚数に従って課金されるストック型ビジネスに転換したのは業界でも前例がなく、初期費用負担の軽いサービスは、利用者が増加していきました。その上、従来存在した利用期間制限を取り払って継続保障体制としたことで、ユーザーは継続的に利用する流れとなりました。この転換には約5年かかりましたが、現在のストック型ビジネスモデルの礎となっています。
さらに同社は2018年から、従量型課金モデル+ストック型ビジネス→完全ストック型ビジネスへの切り替えを含むビジネスモデルの大変革を進めてきました。
現在、ソフトウェアライセンスについての収益モデルは、月額サブスクリプションによるストック型の収益モデルとなっています。売上は、導入時のインストラクション収益とシステム合わせて購入されるPC売上などの「フロー売上」と、ソフトウェアライセンスの月額サブスクリプション収益、システムの保守・運用収益、サプライ品に関する収益などによる「ストック型収益」で構成されます。ここ数年ストック売上比率は50~60%で推移しており、安定収益基盤として業績を支えています。
ソフトウェアライセンスがサブスクリプションベースのストック型収益モデルに移行してからの2019年以降の業績を見てみると、2024年度までの5年間の年間平均売上成長率は12.8%と、10年間平均の8.5%から加速しています。同様に営業利益は24.4%で10年平均の14.1%から大きく加速しています。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。