財務官僚OBの高橋洋一・嘉悦大学教授
途中から“蚊帳の外”に置かれた立憲民主党
予算修正協議で途中から“蚊帳の外”に置かれたのが立憲民主党だった。立憲は高額療養費の引き上げ凍結やガソリン税引き下げなど3兆8000億円の予算修正を要求。自公と協議を進めたが、交渉相手を維新に乗り換えられた。怒った野田佳彦・立憲民主党代表は「なめんなよ」と吠えた。
「野田さんは財務省と仲がいいんだけど、今回はまんまと利用された。立憲の要求した3兆8000億円の予算組み換えには、基金の返納などの財源案が盛り込まれているから、差し引きで見ると国の減収は大きくない。ただ、財務省としては項目が多すぎて作業が面倒なわけです。だから財務省は、立憲民主党を維新とも国民民主とも修正で合意できなかった場合の予備の交渉相手、要するに“キープ君”として扱った。立憲も最初から国民民主や維新と共闘を組んで与党と交渉すれば成果があがったかもしれないが、こちらも玉木さんや前原さんと関係が良くないから組めないだろうと見透かされていた」
野田氏に“当て馬”に利用されたのではないかと聞くと、「私が代表就任以来掲げている『熟議と公開』の方針に沿い、前例のない充実した国会審議が実現したことを見れば、ご指摘は当たらない」と答えた。
国会の舞台裏では、財務省が与野党の政治家を互いに競わせ、アメを与え、時にはハシゴを外して巧妙に操りながら、自分たちの望む方向へと誘導していた。結果、国民が期待する「手取り増」の大減税は遠のいたのだ。
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【プロフィール】
高橋洋一(たかはし・よういち)/1955年、東京都生まれ。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。1980年大蔵省(現・財務省)に入省、小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官し、『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞した。YouTube「高橋洋一チャンネル」で注目を集め、チャンネル登録者数は120万人を超える。
※週刊ポスト2025年3月21日号