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音楽シーンの発信拠点「渋谷タワレコ」30年間の変貌と目指す先 「CDだけを売る店」から「体験できる店」へ、客層も幅広い年代に変化 レコード売り場は海外客も取り込み賑わう

人気アーティストの撮影スポットは常時賑わう

人気アーティストの撮影スポットは常時賑わう

カセットコーナーも充実している

カセットコーナーも充実している

“新しいメディア”としてのアナログレコード

 その後コロナ禍を経て、中規模のリニューアルを行なったのが2024年のことだ。前述のとおりアナログレコード売り場を広げたほか、クラシックや洋楽の取り扱いも充実させた。「コロナ禍に行動制限がかかった反動で、アナログの良さが見直されたことは大きい」と、谷河さんは振り返る。

「8階にあった催事場を2階という低層階に下ろして“体験”へのアクセスをより短くし、8階はすべてクラシックに。また、アナログレコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA』はフロアの半分で展開していたところ、6階の1フロア全体に拡大しました」(石黒さん)

 アナログレコードが、2015年ごろから一部で注目されていたのは事実だ。山下達郎や竹内まりや、小沢健二のようなシティ・ポップが世界的に流行したことを追い風に、今は若いアーティストが新譜をレコードで出すケースも増えている。

「若い人たちにとって、アナログレコードは “新しいメディア”。その音質はもちろん丁寧に扱わなきゃいけない点や、アートのように部屋に飾れる点など、データメディアにはない魅力は新鮮です。今、音楽の聴き方としてはサブスクが主流かもしれませんが、“聴く”だけでなく、ライナーノーツや歌詞カードを見る、飾る、所有するなど、CDやレコードの価値はまた別。サブスクで聴いて気に入ったものをCDやアナログで買うというように、音楽を楽しむために2種類以上のメディアを活用するファンも多いです」(谷河さん)

 レコードフロアでは、中古ゾーンと新譜ゾーンがほぼ半々。中古エリアでは“宝探し”のような楽しみもあり、カゴいっぱいに商品を入れる海外客も珍しくない。

「日本のアニメやゲームの主題歌で興味をもったという海外のお客様も多く、コロナ禍を経た今、売上は常に過去最高をマークしています。渋谷タワレコほどの規模のCDショップは世界的にも珍しく、また、帯付きレコードは日本独特なんですよね。洋楽のアルバムだとしても、日本での国内盤を買っていかれる方は多いです」(谷河さん)

 ちなみに昨年3月にSNSで大きな話題となったのは、ビヨンセのゲリラ握手会。新アルバム『COWBOY CARTER』の発売を記念したサイン会で、当日緊急告知するや、200人の限定握手券は「瞬殺」。X上には、その“神ファンサ”を報告する声があふれた。谷河さんが、このゲリライベントの裏側を明かす。

「世界にこうしたショップがないなかで、安全にファンとのリアルなコミュニケーションを図れる場所として、評価していただけたのかなと」(谷河さん)

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