米価格の高騰が続いている(イメージ)
米価格の値上がり率が過去最高となっている。農水省の調べではスーパーでの販売数量・価格は2月17日週で米5キロあたり3939円と、前年同期比なんと94%増と高騰が続いている。
かつてない“値上がり”に消費者からは悲鳴があがるなか、政府は備蓄米21万トンを市場に放出する方針を決定したが、そもそも日本人の米の消費量は下がり続けている。農林水産省によると、一人当たりの米の消費量は1962年の118.3キロから2022年には50.9キロと、60年で半減しているのだ。
こうした現状を踏まえて、米農家は複雑な思いを抱いている。米農家のリアルな本音を紹介しよう。
3トン弱で60万円にしかならない
広島県で米作りをしているMさん(70代男性)は、「米を食べてくれなくて、作っても売れなくなっていたのに、価格が上がると文句を言われるなんて」とボヤく。
Mさんは50年以上米作りに関わってきている大ベテラン。米価格の高騰については、「むしろ本来あるべき価格に近づいているのでは」と冷静だ。
「『米が高い』『なかなか売っていない』などと騒がれていますが、私に言わせると、『高いと思うなら自作するしかないですね』と。自分たちに都合の悪いときだけ消費者として主張されると、寂しい気持ちになりますね。どちらかというと今までが安かったことに気づいてほしいです」(Mさん。以下「」内同)
Mさんは「米作りは儲からない」とキッパリ断言する。では、なぜ儲からない米を作っているのか問うと、「代々受け継いできた土地で、農業をするという使命感でしかない」と答えた。それでは、どれほどまでに儲からないのだろうか。
「一昨年前まで、農協の買い取り価格が30キロで6000円ほど。たとえば10a(単位:アール。1aは100平方メートル)の田んぼで米を作ったら、収穫量は570キロほど。これを農協の買い取り価格に換算すると11万円前後です。私のところでは50aぐらいの田んぼで米を作っていているので、2800キロ強を収穫して年間60万円の売上にしかならないんですよ。とても米だけで食べていける金額ではありません」
Mさんは「米以外にトマトや茄子などの野菜を作っているほか、元々不動業をしていたため何とか生活をすることができている」と台所事情を打ち明けるが、農業はどうしても天候に左右されるため、収入は安定しない。