スーパーで買い物をするたびに痛感させられる物価高。とりわけ高いと感じるのがコメや野菜・果物などの農産物だ。いずれ供給が追いついてくれば元の価格に戻ると期待したいところだが、今後2割もの農地が“消滅”するという衝撃の推計を農林水産省がまとめた。日本の農業は一体どうなるのか──。
日本が抱える重大課題に斬り込んだ新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題のジャーナリスト・河合雅司氏が解説する【前後編の前編。後編を読む】
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「令和のコメ騒動」は新米が流通しても収まる気配がないが、今後さらに事態が深刻化しそうである。農地の激減が根本原因となってきているためだ。
農林水産省がこのほどまとめた推計によれば、農業経営体は2020年の108万から2030年には54万へと半減する。
内訳としては、法人等団体は4万から5万に増えるが、主業経営体(個人経営体)が23万から11万に減り、準主業経営体(農業外の所得が主で、60日以上働く65歳未満の世帯員がいる個人経営体)と、副業的経営体(60日以上働く65歳未満の世帯員がいない個人経営体)の合計は81万から38万に落ち込むと予想している。
経営体が減るにつれて、経営面積(耕作面積)も約92万ヘクタール減る(約35%減)と見込んでいる。全国の耕作面積は427万2000ヘクタール(2024年7月15日現在)なので、2割ほどの農地が“消滅”するということである。これは東北地方の耕地面積(80万9600ヘクタール)を大きく上回る規模である。インパクトの大きさが理解できよう。
今回の推計は、初めてコメ、麦、大豆などの土地利用型作物、露地野菜、施設野菜、果樹の4品目に分類した見通しも示したが、土地利用型作物の経営体は2020年の60万から2030年には27万へと55%減る。果樹も13万から6万5000へと半減する。
この結果、土地利用型作物は耕作面積が74万ヘクタール減となる。果樹は9万ヘクタール減で、これら2品目だけで減少面積全体の9割を占める。
一方、露地野菜と施設野菜については主業経営体こそほぼ半減するが、耕作面積は元の数字が大きくないこともあって、露地野菜が8万ヘクタール減、施設野菜は9000ヘクタール減にとどまる。これら野菜に関しては生産が大きく減少するという事態は避けられそうだ。