喫煙所を設置しなければならないのか?(イラスト/大野文彰)
改正健康増進法の施行によって多数の人が出入りする施設での喫煙が禁じられた。専用の喫煙所を設けるなどの対応をとる施設も多い。では、団地などで管理会社が契約する清掃作業員のために喫煙所を設置する義務はあるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
団地で管理組合の理事をしています。組合が契約している住宅管理会社の清掃作業員が喫煙者なのですが、委託先の従業員のために喫煙所を設けなければならない法律的な義務はあるのでしょうか。組合としては敷地内に喫煙所を設けたくありません。ちなみに、清掃作業員は組合と直接の雇用関係はなく、管理会社から派遣されています。(東京都・57才・会社員)
【回答】
健康増進法が喫煙室について規定しています。同法では、学校や病院など受動喫煙で健康被害を受ける恐れが高い者の利用施設と行政機関の庁舎を第一種施設とし、それ以外の多数の者が利用する施設を第二種施設と定義し、双方で何人も正当な理由なく喫煙してはならないと定めています。違反すれば知事から喫煙の中止命令を受け、従わないと罰金で処罰されます。
しかし、第二種施設の管理者が一定の条件が備わった喫煙専用室を設ければ、そこで喫煙ができるとしています。言い換えれば、喫煙を認めるのでなければ喫煙室を設置する法的義務はありません。
ご質問の場合、禁煙を求めてもよいと思います。団地は多数の者が出入りする施設ですから第二種施設です。「人の居住の用に供する場所」は、喫煙禁止の適用除外となっていますが、住宅管理会社の清掃対象になる共用スペースは、暮らしに不可欠であるものの、居住の用に供する場所とまではいえないので、作業員の喫煙は健康増進法違反の可能性があります。