閉じる ×
投資
伝説のプログラマーが説く「メタトレンド投資」の極意

「10年、20年かけて株価10倍、100倍へ」エヌビディアの価値をいち早く見抜いた投資家が“次のエヌビディア”を見込んでウォッチリストに入れている銘柄とは

元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)

元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)

 NVIDIA(エヌビディア)のように将来大化けする成長銘柄を早い段階から“一本釣り”するのは至難の業だろう。そうした銘柄にいち早く目をつけて大きな投資成果を上げてきたのが、元マイクロソフトの“伝説のプログラマー”で投資家の中島聡氏だ。前編記事では、NVIDIA株への投資実例を踏まえて、まずは複数の企業に少額投資し、ウォッチリストを作成して「次のきっかけ」を待つことが大切だと紹介した。その具体的プロセスについて、中島氏の著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から再構成して紹介する。【前後編の後編】

■前編記事:「最悪ゼロになってもいい」から大化けへ 伝説のプログラマー投資家・中島聡氏が2014年から少額投資していたエヌビディア株を“買い増す決断”をしたタイミング

先行者利益を得ようと焦る必要はない

 ウォッチリストに追加し、次のきっかけを待つ。メタトレンド投資では、このステップをこまめに繰り返していくのが基本です。

 私はARやVRがいずれ大きなメタトレンドになるだろうと考えています。ですが、現時点ではまだ決定的な兆候は見えていません。さらに、現在の主要なプレイヤーはAppleやMeta といった巨大IT企業。すでに大きな時価総額であり、彼らの株価がここから10倍や100倍に伸びるとは考えにくいのも事実です。

 また、ARやVR領域で最終的に勝つ企業がApple やMeta だとも言い切れません。意外なベンチャー企業が割って入り、IT業界の巨人たちを華麗に追い抜くシナリオも十分あり得ます。こうした状況では簡単に「この会社だ!」とピンポイントでは決めきれないため、まずは有望そうな企業をウォッチリストに入れ、見守るのが得策です。

 私のウォッチリストには、Snap(スナップ)が名を連ねています。Snap は、投稿が一定時間で消えるSNS「Snapchat」で一躍有名になった企業です。

 そのSnap が現在、開発に注力しているのがARグラスです。2021年には開発者向けのモデル「Spectacles(スペクタクルズ)」もリリースし、AR分野への本格参入を表明しています。

 ARの分野ではApple やMeta といった、誰もが知る巨大IT企業が莫大な資金と技術力を投じて熾烈な開発競争を繰り広げています。

 一見すると、Snap のような新興企業が太刀打ちできる相手ではないように思えるかもしれません。しかし、あえてその厳しい市場に果敢に挑戦し、独自のポジションを築こうとしているSnap の姿勢に私は大いに注目し、可能性を感じました。だからこそ、私のアンテナに引っかかり、ウォッチリスト入りを果たしたのです。

 ただし私は、Snap の株はまだ買っていません。Snap の本業であるSnapchat はInstagram やTikTok に圧倒され、復活の兆しはありません。さらにSnap の株価もピークだった2021年9月の83ドルから大幅に下落し、現在は10ドル台前半を推移。さらに赤字経営も続いています。

 私自身、Snapchat を普段使っているわけではありませんから、NVIDIA やTesla ほどの確信を持てているわけでもない。2024年9月には第5世代になる「Spectacles」を発表しました。解像度やバッテリー寿命などが改善しましたが、まだAR業界のゲームチェンジャーになるには程遠いスペックです。まだまだ「この会社は伸びる!」とは感じさせてもらえません。したがって現時点では投資せず、依然としてメモを取るという形でウォッチリストに加え、その動向を見守っています。

 今後、「Snap のARグラスが想定外に売れている」「Meta の同製品よりも注目を集めている」「Snap が搭載したAIチャットがすばらしい!」といったニュースが飛び込んできたら、その時点でARグラスを購入し、投資を検討するかもしれません。

 テクノロジー業界と聞くと、多くの人が「変化が激しく、先行者利益を得るためには、一刻も早く飛びつかないと乗り遅れてしまう」というイメージを抱きがちです。たしかにそういった側面があることも事実です。

 しかし、メタトレンド投資の視点に立てば、必ずしも焦る必要はなく、むしろ冷静に長期的な視点を持つことが合理的です。なぜなら、メタトレンドとは10年、20年、場合によってはそれ以上続く、非常に長いスパンでの潮流だからです。

 したがって短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期保有を前提に腰を据えて「次のきっかけ」を待つほうが、大きなリターンにつながる場合が多いのです。

 とりわけARやVRといった分野は、技術的な成熟や市場への普及に、まだ時間がかかると見られています。だからこそ、今すぐに飛びつかなくとも十分にチャンスはあるのです。

 大金を一気に投じて失敗するリスクを冒すよりも、まずはウォッチリストを活用して、丁寧に情報を集め、自分なりの「確信」が得られるタイミングが訪れるのを待つ。

 そしてそのときが来たら、満を持して本格的に投資を実行する。これこそが私が考えるメタトレンド投資のスタイルなのです。

次のページ:一気に追加投資するタイミング

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。