元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)
少子高齢化や非効率な経営慣行など、日本経済には根深い構造的問題があり、市場全体としての魅力は乏しい――。NVIDIA(エヌビディア)株に2014年から投資をはじめるなど、そのポテンシャルをいち早く見抜いたことでも知られる元マイクロソフトの“伝説のプログラマー”で投資家の中島聡氏は、日本市場に対し冷静にそう指摘する。しかし同時に、海外市場で競争力を発揮する企業など、日本にも世界水準で有望な投資対象が存在するとも明かす。中島氏が魅力を感じる日本企業とは。中島氏の著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から再構成して紹介する。【前後編の後編】
■前編記事:「外国人から見ると異様でしかない」日本企業に根強く残る“非効率な経営”の実態 “伝説のプログラマー投資家”が日本市場全体への投資を躊躇する理由
海外市場で圧倒的な競争力を発揮し活躍する日本企業
日本経済は、“日本全体”で見ると構造的な課題を抱えています。特に少子高齢化による市場縮小や成長率の鈍化はこれからますます避けられないでしょう。したがって私は日本市場を対象にしたインデックス投資やETF 投資を行うことはありません。
しかし、個別企業に目を向けた場合には、まったく別の景色が見えてきます。
日本経済を待ち受ける厳しい状況とは裏腹に、海外市場で圧倒的な競争力を発揮し、目覚ましい活躍を見せている日本企業は少なくありません。
例えば2020年、アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、日本の5大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)へ投資を行ったのは大きなニュースになりました。さらに2022年には買い増しを行ったことも明らかになっています。「投資の神様」とも呼ばれるバフェット氏がいかに日本の商社に高い評価を見出しているかがうかがえます。
商社以外にも、電子部品や精密機器で世界的なシェアを誇る村田製作所や京セラなど、国際競争力に長けた企業は少なくありません。
このような海外での売上が大きい企業であれば、国内市場の縮小から受ける影響は比較的軽微で済むでしょう。
私の投資の中心はアメリカ企業への個別株投資です。アメリカに住んでいると日本企業の個別株投資にはいくつかのハードルがあり、気軽に投資できません。しかしその中でも独自の強みや将来性を感じ、厳選して投資した日本企業がいくつかあります。
例えば、日本の大手化学メーカーである信越化学工業。同社は、半導体の基板材料となるシリコンウエハーで、世界シェアトップを誇る優良企業です。長年の研究開発によって培われた世界最高水準の技術力を保有し、半導体産業の発展に必要不可欠な存在となっています。
さらに同社は、将来的に半導体製造の主流材料がシリコンから窒化ガリウムに置き換わる可能性を見据えています。実際に、窒化ガリウム半導体の研究開発にも積極的に取り組んでいます。
現時点では、本当にシリコンから窒化ガリウムへの本格的な置き換えが起こるのか、そしてそれがいつごろ、どの程度の規模で起こるのか、正確にはわかりません。しかし私は、同社の将来を見据えた先見性と技術力の高さに大きな可能性を感じています。そしてなにより「応援」の意味も込めて株を購入しました。