株式投資の楽しみの一つである株主優待。気をつけるべき点は?
株主優待は、優待を目的とした投資を行う人も多く、人気を集めている。しかし、最近は、優待を縮小・廃止する企業が目立つ。この背景はどのようなものか。また、優待投資で気をつけるべき点は。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第134回は、「株主優待の落とし穴」について。
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新NISAでも大人気の優待株投資。とくに初心者さんは、「お得だから」「楽しそうだから」という理由で、優待目的の投資を行う人が多いように感じます。しかし、最近はその優待を縮小・廃止する企業が目立っています。
たとえば、ITインフラなどを提供するセグエグループ(3968)は2024年12月期に導入決定した株主優待制度で、年2回1000株以上保有の株主に各期ごとに1万5000円分、年間3万円分のQUOカードを贈呈するとしましたが、2025年12月期より、年1回でQUOカード1万円に縮小しました。
また、不動産テック企業のREVOLUTION(8894)は、2024年10月に、2000株以上、かつ2回以上連続で株主名簿に記載された株主に「QUOカードPay」6万円(年間12万円)を贈呈するという大胆な優待を新設しましたが、一度も実施されることなく廃止を発表しました。前代未聞の失態に、廃止発表後は連日ストップ安となり、優待目的で株を買った投資家は大打撃を受けています。
株主優待の新設や廃止は、株価に大きな影響を与えるため、企業はそれなりの理由をもって決断しています。
企業が株主優待を導入する理由
企業が優待を実施するのは、単なる「おまけ」ではありません。
一つ目の狙いは、株主の長期保有を促すこと。優待目的で買うのは個人投資家が多いため、長期保有をすることが多く、株価が安定しやすくなります。
二つ目は、自社商品の宣伝効果。たとえば外食チェーンが食事券を優待にすれば、お店に足を運ぶきっかけになり、リピーターも期待できます。
さらに、個人株主を増やすことで、敵対的買収を防ぐという経営上のメリットもあります。株主が分散していれば、大口投資家による影響を受けにくくなります。こうした理由から、企業は株主優待を「コストをかけてでも導入する価値がある」と判断することがあります。