心房細動の治療として、カテーテルアブレーションが広く実施されている
生活習慣が乱れがちの働く人にとって、高血圧は罹患しやすい病気のひとつ。近年は、脳梗塞の原因になる「心房細動」の要因として、高血圧が注目されている。高血圧患者約4000人対象の大規模調査で明らかになった「隠れ心房細動」とは──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、京都府立医科大学・妹尾恵太郎准教授が高血圧と不整脈である心房細動の関係と治療法について解説する。【心房細動という不整脈のリスク・後編】
高血圧の治療は心房細動の発症を抑える
近年、心房細動の要因として、特に注目されているのが「高血圧」です。そもそも血圧とは、心臓から送り出された血液が血管を押す圧力のことで、一般的には静脈の血圧である静脈圧を指します。また、心臓が収縮して血液を送り出す際の収縮期血圧(=上の血圧)と、次に送り出す血液を心臓に貯めて拡張した際の拡張期血圧(=下の血圧)とに分けて計測されます。
生活習慣病である高血圧は、日本に約4300万人の患者がいると推計され、年々増加しています。高血圧の患者は、心臓疾患や脳血管疾患の発症リスクが高いことがわかっており、高血圧に起因する脳・心血管疾患による死亡数は年間で10万人と推定されています。ところが、「国民健康・栄養調査」(2016年調査)によると、高血圧患者4300万人のうち約33%にあたる1400万人が「高血圧であることを認識していない」、あるいは、「認識していても治療をしていない」という結果になっています。
さらにこうした高血圧患者は、不整脈を併発しているケースがとても多いことが報告されています。不整脈の中でも、とくに命にかかわる危険性が高いのが心房細動であり、心房細動の最も重要なリスク因子は高血圧です。高血圧と心房細動は加齢に伴い増加し、心機能の低下や心血管イベントを引き起こすきっかけになります。高血圧の治療は心房細動の発症を抑制することに繋がるため、しっかりとした認識と治療が重要なポイントと言えます。