1月には幕張メッセで10周年記念イベントが開かれた(プレスリリースより)
日本史に伝わる「刀剣」をキャラクター化したオンラインゲーム『刀剣乱舞ONLINE』。2025年の今年、10周年を迎えた。同作は、舞台、ミュージカルなど幅広いメディアミックス展開を続け、各地で実際の刀剣展示ともコラボレーションをするなど、その人気がジャンルを越えて広がっている。その魅力はどこにあるのか。ライターの田中稲氏が、「刀剣乱舞の推し活で健康を取り戻した」という60代女性のケースを通じて、刀剣乱舞10年の軌跡を辿る。【シリーズ:『刀剣乱舞』10年の軌跡】
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神社仏閣、博物館にも影響
人気オンラインゲーム『刀剣乱舞ONLINE』が今年、リリースから10周年を迎えた。その人気拡大の軌跡は、知れば知るほどまさに“奇跡”のようである。大元となったブラウザ向けシミュレーションゲームの累計ユーザー数は1300万を突破。今やミュージカル、舞台、映画、アニメ、マンガ、歌舞伎……と、幅広いジャンルにメディアミックス展開が広がっている。
日本史の中で実在した、もしくは語り継がれてきた刀剣は数多い。刀剣乱舞では、刀剣を生んだ刀匠の技や持ち主の想いにより宿った「付喪神(つくもがみ)」が人の形を得、刀剣男士となる。プレイヤーは神託を受ける「審神者(さにわ)」となり、刀剣男士を集めて歴史を守るという設定である。
世界に類を見ない「名前がついている」日本の刀剣の特徴を生かし、擬人化された刀剣男士は、どれも美しく魅力的に映る。衣装・性格・口ぐせなどに刀剣にまつわる歴史背景が詰め込まれ、多くの人の心を掴んでいる。
その人気の波は、神社仏閣、博物館にも影響が及んでいる。ゲームがリリースされた2015年には、刀剣乱舞に登場する、消えた大太刀「蛍丸国俊」(*熊本・阿蘇神社に奉納されていた旧国宝だが、太平洋戦争終戦後の混乱で行方不明になった)復元プロジェクトがクラウドファンディングで実施され、刀剣乱舞ファンを含む多くの出資者が参加。目標額の8倍となる4512万円を集め、2018年に復元された。
岡山県瀬戸内市がクラウドファンディングで購入した国宝「山鳥毛」とのコラボ展示(立花さん提供)
2017年に足利市立美術館で開かれた「山姥切国広展」には各地から多数のファンが詰めかけ、足利市によると、展覧会の経済効果は「4億円前後」に上ったという。刀剣乱舞10周年の今年は、同美術館で刀剣乱舞とのコラボレーション展示を実施。3月23日までの会期中、市内の施設や飲食店でもコラボ企画が実施され、多くの刀剣乱舞ファンで賑わった。
2018年11月に開始された、岡山県瀬戸内市による「山鳥毛里帰りプロジェクト」(*上杉謙信愛用の太刀で国宝の「山鳥毛」を生まれ故郷の備前長船に里帰りさせる=瀬戸内市が購入するプロジェクト)のクラウドファンディングにも、刀剣乱舞ファンら多くの個人や企業が出資。約8.8億円を集め、2020年3月、山鳥毛は瀬戸内市の所有となった。
ここに挙げた以外にも刀剣乱舞とコラボしたイベントやコンサート、舞台、展覧会や施設のオープンが近年相次いでいる。特に今年は10周年を記念した行事や公演も数多く実施または予定されている。刀剣乱舞のリリース以来、日本中で刀剣が一大ムーブメントとなっているのだ。