「恋愛相談」をしてくる学生には要注意
Aさんによれば、さらに厄介なのがこれらのタイプの“複合型”だという。
「ハラスメントタイプと依存タイプが合体したようなケースもあります。典型的なのが『恋愛相談』をする学生です。女性教員に自分の恋愛に関する相談をして、その流れで女性教員に対する恋愛感情を転嫁させたり、性的な対象としてアプローチしたりする。私も20代後半から30代前半の頃、ゼミ生から『一対一で飲みたい』『DJをやるので、イベントに来てほしい』『先生の家で鍋をしたい』『俺は年上が好みです』などと、不適切な言動には多々直面しました。
実際に、ゼミなどで飲み会を行うと、お酒が入った勢いでこういった発言をしやすくなる。そこから、トラブル回避のために学生との飲み会は控えるように決めました。学生とコミュニケーションを取る貴重な時間ではありますが、トラブルに巻き込まれる方が困ります。その場では楽しそうにしている学生も、あとから豹変することがある。権力勾配があるため、教員側が『ハラスメント加害者』となってしまいます」(Aさん)
男女問わず「教員との距離が近すぎる学生」に警戒
セクハラだけでなくアカハラも生じやすい大学では、「教員との距離が近すぎる学生」の存在に注意が必要だという声もある。私立大学で経営学を教えている女性教員のCさん(40代・教授)は、こう語る。
「昨今、大学内部でのハラスメント事案が問題化するケースが目立ちます。権力の上下関係に基づくパワー・ハラスメント(パワハラ)やセクシャル・ハラスメント(セクハラ)だけでなく、アカデミック・ハラスメント(アカハラ)も多発しやすいのが大学という空間です。もちろん、女性教員が加害者になるケースもあります。
某大学で、女性教員が指導院生の男子学生を海外出張に同行させ、性的行為を強要したというハラスメント事案が問題化したことも記憶に新しい。こうしたケースはアカハラとセクハラが絡み合っています。そのため、今では、男性教員から女子学生に対するハラスメントだけでなく、女性教員から男子学生に対するハラスメント、そして同性間でのハラスメントにも過敏になっています」(Bさん)
そんなBさんが、なかでも注意を払っているのが、次のようなタイプの学生だ。
「とくに私が警戒しているのが、男女問わず『教員との距離が近すぎる学生』です。他の学生よりも特別な存在になりたい、距離を詰めたいという学生は女子学生にもいます。たとえば、女子学生のなかには『先生と2人でカフェに行きたい』『先生と一緒に飲みたい』と個人的に関係を深めようとしたり、腕を組むなど身体的接触を求めてきたりする場合があります。同性だからと安心して対応していると、あるときから教員への依存が生じ、過剰な要求をしてくることがある。
学生の精神状態が不安定になったり、思い込みによって自分が軽んじられていると感じた瞬間、教員への愛着が憎悪に変わるケースもあります。最近の学生は、トラブルを感じると直接教員と対話せず、すぐ大学事務にクレームを入れるケースが多く、学内で問題化してしまうこともある。なかには『嫌われたから単位がもらえなかった』『急に私のことだけ差別した』などと訴える事例も……。自立した成人としてではなく、高校生と担任のような関係を求める学生は昔よりも増えた印象です」(Bさん)