“大学生たちの学問離れ”を心配する声も(写真:イメージマート)
就職活動の早期化に伴い、大学では就職活動支援体制の強化に追われるようになっている現実がある。学内にキャリアセンターを設け、キャリアアドバイザーを常駐させるほか、授業でもエントリーシートの書き方などを教えるケースもあるという。こうして大学の就職予備校化が進む一方で、疎かになりがちなのが、学生の本分であるはずの学業だ。大学教員たちへの取材をもとに、「内定」というゴールを目指すためだけに学生生活を送る大学生たちのリアルな姿をレポートする【前後編の後編】
■前編記事:【就職予備校化する大学】就活強者と弱者のあいだに横たわる格差、大学側も不安を抱える学生たちのメンタルケアに奔走 就活支援の取り組みへの負担も年々増加傾向に
「卒論はコスパが悪いです」という学生
都内の私立大学に勤務している大学教員の男性・Aさん(60代)は、ここ数年でゼミや卒業論文に対する学生の意欲低下が目立つようになったと話す。
「最近、学生から『卒論はコスパが悪い』という言葉を聞くようになりました。うちの大学は、学部によって卒論の執筆が必修か、必修でないかが異なる。私が所属している学部は、卒論が必修ではなく、希望する学生だけが卒業論文を執筆する、という規定になっています。従来は卒論のためにゼミに所属する学生も多く、卒論合宿を開いたり、成果物を大学4年間の集大成と捉える風潮がありました。
ところが、ここ最近は『できるなら卒論は書きたくない』と考える学生も増えています。もちろん昔からそのような意見を持っていた学生はいたと思いますが、最近ではゼミの教員や学部の教員に向かって、直接『先生、卒論はコスパが悪いです』『このゼミはガクチカ(=学生時代に力を入れたこと)に使えますか?』などと発言する学生が増えていて、少々驚きを感じています。そもそも最近は就活が早期化しているので、卒論に取り組む時期とはあまり被らないはずですが、学生たちのあいだに“大学=就職予備校”という考えが浸透したことで、学問に向き合う時間としての卒論やゼミの意義が薄れているように感じます」(Aさん)