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キャリア
元マイクロソフト役員が教える「世界の一流の働き方」

「ウチの会社は大丈夫」…と“安心して何もしない企業”がいちばんマズい 元マイクロソフト役員が考える「安定」の本当の意味

忙しさの原因は「人手不足」ではない

“働き方改革”とはよく言いますが、我々が提案しているのは、どちらかといえば“稼ぎ方改革”に近いです。

 間違いないのは、「同じことばかりやって成長する企業はない」ということ。だとすれば新たな取り組みを始めなくてはいけませんが、「忙しくてできない」と悩んでいる企業は多いものです。ただ、僕がコンサルを担当したクライアントをAIやITツールで分析したところ、忙しさの原因が「人手不足」ではないことが判明するケースがほとんどです。

 例えば「働く時間の39パーセントが社内会議だった」とか「その社内会議のうち41パーセントが内職していた」といったことが見えてくる。削減すべき業務や改善箇所を実際に削減してみると、全然業務に影響がないのがわかってくるんです。

 労働人口やトータルの労働時間は減っていく。でも、売上・利益を上げなければならない。ならば、無駄なことは一切やめて、新たな利益を生み出すものに集中していくべきです。例えば会議や資料づくりとかメールのやり取りといった時間を減らして、その時間を新たなサービスやサブスクモデルといった新事業の開発に充ててもらうなどです。

“安心している企業”がいちばんマズい

 とはいえ、企業が“考え方”から稼ぐ方法を変えるのは、結構大変な作業ですね。ただ、我々にコンサルを依頼してくださるのは、そうした危機感を持ち「組織の体質を変えたい」と思っている方々でしょう。

 一方、「うちの会社は潰れない」「このままで大丈夫だ」と危機感がない組織もあり、それは圧倒的に大企業に多いです。経営陣は危機感を持っていても、現場は「ウチの会社は大丈夫」と信じ込んでいる企業もある。“安心している企業”はいちばんマズいと思います。“不安に思っている企業”が健全なんです。不安だから行動を変えたり、ITを取り入れたり、休み方改革に取り組んだりするわけじゃないですか。

 この“危機感を持っているか”は、重要な指標だと思います。仮に安定している企業でも、「安定=何もしないこと」ではなく「安定=変化に合わせて変わっていくこと」であると理解しているかが肝要です。「ダーウィンの進化論」でも言われていることですが、強い人や賢い人が生き残るのではなく、時代や環境にあわせて変化できる人が生き残れるのです。

「危機感を持ち、周りの変化に気づいて、しなやかに変わっていく」というのが、“最強の安定戦略”。何もしないで安定していると思っている人は、いますぐ考え方を変えるべきだと思います。

【プロフィール】
越川慎司(こしかわ・しんじ)/株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社に勤務した後、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの事業責任者を歴任する。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。京都大学など教育機関で講師を務める他、企業や団体のアドバイザーを務める。著書に『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『仕事は初速が9割』(クロスメディア・パブリッシング)など。

越川氏の著書『世界の一流は休日に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)

越川氏の著書『世界の一流は休日に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)

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