AIができない「0から1」こそ人間が担うべき役割
冷静に考えると、ITが働き方を変えることはないんですよ。
人間は働き方を変えるときに、手段としてITを使います。しかし、そのせいで多くの企業が苦しんでいます。多くの企業が、ChatGPTや生成AIを導入しました。しかし当たり前ですが、導入しただけでは夢のような世界が広がることはないのです。あくまでもITは手段ですから、人間が効率を高める使い方をしない限り、働き方が変わらないどころか、脳の疲れを溜めるばかりになってしまいます。
僕は7年ほど前からAIを使っていますが、もう「情報を集めてくる」とか「文章を書く、構成する」といったことは、ChatGPTの方が上回っている。だから、人間じゃなくてもいい仕事はAIに任せた方がいいと思っています。
では人間に求められる役割は何か。それは“業務処理”ではなく、“仮説設定”と“想像力”だと思うんです。0から1を生み出すクリエイティビティと、それを基に妄想する仮説力です。AIはデータがないと分析できないので、0から1はできない。一方で、0から1、例えばデータ化されてない“経験”や“知識”ならば、僕の頭の中にある。つまり、妄想や仮説こそが、人間がいちばん得意な部分なんですよね。
【プロフィール】
越川慎司(こしかわ・しんじ)/株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社に勤務した後、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの事業責任者を歴任する。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。京都大学など教育機関で講師を務める他、企業や団体のアドバイザーを務める。著書に『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『仕事は初速が9割』(クロスメディア・パブリッシング)など。
越川氏の著書『世界の一流は休日に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)