「ライブドア騒動」和解後、記者会見を行った堀江貴文氏とフジテレビの日枝久氏(2005年、時事通信フォト)
世間の注目を集めたフジテレビ問題ではCM放映を中止する企業が続出し、2025年3月期の広告収入は、従来見通しから233億円減少すると予想されている。メディア環境の変化で近年は減る一方の広告収入に頼らざるを得ない、テレビ局経営の構造的な問題も露見した格好だ。今後のテレビCM、そしてテレビ局のビジネスモデル刷新には何が必要なのか。現在はケイアンドカンパニー社長として企業のマーケティングやイノベーションのサポート手掛ける、元ネスレ日本社長の高岡浩三氏にフリーライターの池田道大氏が聞いた。【全5回の第3回。第1回から読む】
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中居正広氏の女性問題とその後の対応の誤りで窮地に陥ったフジテレビ。CM放映を中止した企業は300社以上に達し、フジで流れるCMは“ACジャパン”だらけになった。だが元ネスレ日本社長の高岡浩三氏は「僕がフジテレビのクライアントだったら違う対応をしたかもしれません」と語る。
「ACジャパンばかり見せられるのも嫌だし、1社だけCMが残っていたら、かえって目立つかもしれません(笑)。そもそも僕の中ではフジというメディアが悪いのではなく、フジの経営者が間違った対応をしたのであり、社員は一生懸命仕事をしています。だから、僕がクライアントだったらひょっとしたらCMを残したかもしれません」(高岡氏・以下同)
フジの問題がなかったとしてもテレビCMをめぐる環境は厳しくなる一方だ。大手広告代理店の電通が2月末に発表した調査レポートによると、2024年のテレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は1兆7605億円で、インターネット広告費3兆6517億円のほぼ半分だった。
「広告は顧客の時間を買うようなものですが、かつてはテレビを視聴していた時間がSNSを含めたインターネットにどんどん置き換わってきた。その中でテレビCMのポーションが小さくなっていくのは仕方のないことです」
他方で、高岡氏は旧態依然のCMスタイルにも異を唱える。例えばビール。国税庁のレポートによるとビールの課税数量は1994年をピークに右肩下がりで大幅に減少し、代わりに低価格の発泡酒やリキュール類の消費が大きく伸びている。
「それなのにビール会社は連日似たようなイメージCMを放送し、大手でシェアを競っています。売上が大幅に落ちて他のアルコール飲料が伸びているのに、20年も30年もビールのCMを続けていることは本当に正しいのか。これが外国の企業だったら、株主代表訴訟を起こされて経営陣が糾弾されてもおかしくない状態ではないでしょうか」