閉じる ×
田代尚機のチャイナ・リサーチ

エヌビディアの株価下落の背景にある“AI革命の現在地” 市場の関心はGPU需要からAI実装局面へ、中国も人型ロボット開発で攻勢を強める

エヌビディア株はなぜ下落しているのか(同社のジェンスン・フアンCEO。Getty Images)

エヌビディア株はなぜ下落しているのか(同社のジェンスン・フアンCEO。Getty Images)

 エヌビディアの株価が下落している。過去最高値(終値ベース、以下同様)は1月6日に記録した149.43ドル。1月27日の“DeepSeekショック”で急落、その後いったん持ち直したものの、2月中旬から3月上旬にかけて大きく売られ、3月10日には106.98ドルの安値を付けている。その後はやや持ち直してはいるものの、3月24日の終値は121.41ドルと、過去最高値から19%下げた水準だ。

 DeepSeekに「GPUを増やせば学習効果は必ず向上するか」と質問すると、そうではないと答える。“重要なのは「適切な規模×最適化技術×コスト管理」である”、“「物理的なGPU数よりもアルゴリズム効率とシステム設計が学習効果を決める」という認識が重要である”といった答えが返ってくる。「モデルのパラメータ数、学習データの量、トレーニングに使用する計算資源を指数関数的に増やすと、モデルの性能(タスクの精度、生成品質など)がべき乗測に従って向上する」といったスケーリングの法則を修正するかのような考え方が出てきたことで、投資家のエヌビディアに対する過度の楽観が一旦修正された。それが足元で起きている株価下落の最大の要因であろう。

 DeepSeek-R1登場以降における米中最新の大規模言語モデル(LLM)はいずれも、人類の上位数%に入る知能レベルに達しており、人の代わりを務められるレベルに十分達している。これまでは、数学、物理など高い推論力を必要とする学問については、課題も多いと言われていたが、最新モデルはいずれも高い推論力を獲得、一流大学の入学試験で合格レベルに達するほどに進化した。

 加えて、オープンソース、安価での提供を始めたことで、DeepSeekは登場からわずか2か月足らずで、政府機関を含め中国社会全体に幅広く浸透した。米国でもLLMのオープンソース化、安価での提供といった流れに追従せざるを得なくなっている。シンギュラリティ通過を目指す動きは弱まることはなく、GPUに対する旺盛な需要は引き続き存在するだろうが、AI革命の重心は「AI+」、つまりAIの実装へと移りつつある。

 今後、定型事務業務を行う公務員、事務系職員、顧客サービス係、配送員、タクシードライバー、製造業における流れ作業を担うブルーカラーから財務会計や法律行政などの業務に携わるホワイトカラーまで、広範な業務分野でAIによる置き換えが進む。社会実装が進む過程でAIへの膨大な需要が発生するはずだ。

次のページ:人型ロボットは運動能力も人類の上位数%レベルに

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。